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和食の基本 和食の調味料 塩

和食の調味料 塩

「塩加減が味の決め手」とも言われるように、料理に欠かせない調味料である塩。
塩気を加えるだけでなく、料理を美味しく美しく仕上げるために様々な効能を発揮します。
同時に、塩は人間の体の中にも含まれ、生命を維持するためにも必要不可欠なものです。
少量で販売されているものも多いので、ぜひいろいろな塩を試して、好みの味を探してみてください。


原料、製法

原料

塩は、塩化ナトリウムと「にがり」と呼ばれるミネラル分が主成分です。
塩のしょっぱさは、塩化ナトリウムによるもの。
海水や、海水が地上で固まった岩塩が主な原料です。

  • 海水塩:海水の水分を蒸発させて、塩化ナトリウムを取り出したもの。ちなみに海水のなかに含まれる塩分はわずか3%です。

  • 岩塩:地殻変動によって海水が陸上に閉じ込められ、長い年月をかけて蒸発して固まった「岩塩層」を削ったもの。つまり、岩塩も元々は海の塩から生まれたものです。鉄分を含む場合、ピンク色のものもあります。日本には岩塩層がないため、日本で流通している岩塩はすべて海外産になります。

そのほか、塩分濃度の高い湖からつくられた「湖塩」や、海藻を使ってつくられた「藻塩」などがあります。

豆知識

「にがり」とは、海水から塩化ナトリウムを取り出した後の、カルシウムやマグネシウムといった無機物、ミネラル分を含んだ残り液を濃縮したもの。
にがりの主成分は塩化ナトリウムで、にがりを多く含む塩はしっとりとした質感。
にがりの量が多すぎると、苦みやクセが強くなるだけでなく、べたつくため調理時に使いづらく感じることもあるようです。
そのため、焼くことで水分を飛ばして使いやすくした「焼き塩」もあります。

製法

塩をつくる工程には、主に塩水を濃縮するための「採かん」、結晶化するための「せんごう」などの工程があり、組み合わせて行っています。
どの製法を用いてつくられているのかは、塩のパッケージ裏面にある「工程」の部分を見るとわかります。
採かんやせんごうには、それぞれ様々なやり方があり、ここでは代表的なものを紹介します。

工程1:採かん

濃い塩水(かん水)をつくるために、濃縮させる工程です。

  • イオン膜(まく):電気の力で、効率的に海水中の塩化ナトリウムだけを集めて、純度の高い「食塩」をつくります。生産性が高く、海水汚染などの影響を受けにくく安全性にも優れているため、1971年から塩業近代化臨時措置法により、日本では一時この製法によってのみ、塩づくりが許されていました。自由化された現在でも、最も多い塩づくりの方法です。

  • 逆浸透膜:特殊な膜を通すことで、海水から真水と濃い塩水を分離します。

  • 天日:太陽光の力で海水を蒸発させて、自然エネルギーの力だけで塩をつくります。日本では天候の影響で天日だけでは結晶化が難しいため、平釜や立釜で加熱する「せんごう」の工程などを組み合わせます。

  • 溶解:海外から輸入した天日塩や岩塩を、水または海水に溶かして、濃い塩水をつくります。にがりの主成分である塩化マグネシウムを添加して仕上げるものもあります。

工程2:せんごう

塩を結晶化させるために、採かんで濃くした塩水を焚く工程です。

  • 立釜:「真空式蒸発缶」と呼ばれる密閉された釜を用いて、気圧を利用して加熱蒸発させて、効率よく結晶化させる近代的な製法。大規模生産に適しています。さらさらした塩ができる傾向があります。

  • 平釜:密閉されていない釜で煮詰めて、結晶化させる昔ながらの製法。効率は悪く、大量生産には適しません。溶けやすく柔らかい、料理になじみやすい塩ができる傾向があります。

種類

食塩

原料 海水
塩化ナトリウムの割合 99%以上
特徴 最も一般的に販売されている、安価な塩。
イオン膜でつくられ、にがりはほぼ除去されているので、純粋な塩味だけが引き立ちます。
吸湿防止のために炭酸マグネシウムを添加した「食卓塩」もあります。
使い方 さらさらしているので、扱いやすい万能な塩です。
特に下ごしらえに使う場合や、煮物など塩以外にも様々な調味料を入れる料理では、塩の味わいはあまり重要ではないので、手軽に購入できる食塩で十分です。
また湿気に強いので、長期保管が可能。
たまにしか塩を使わないという人にも向いています。

並塩

原料 海水
塩化ナトリウムの割合 95%以上
特徴 適度ににがりを残した塩。比較的安価に手に入ります。
使い方 食塩と自然海塩の中間にある塩として使いやすく、万能に使えます。

自然海塩

原料 海水
塩化ナトリウムの割合 95%未満 ※定めは無し
特徴 並塩よりさらに塩化ナトリウムの割合が低く、にがりが多く残された塩の総称。
天日蒸発でつくられた塩は「天日塩」とも呼びます。
ただ、日本では天候の関係で天日塩はつくることが難しく、完全に天日だけでつくられた天日塩は輸入品が多く、国内生産品は希少です。
使い方 天ぷらやお寿司を塩で食べる時や、塩むすび、焼き魚など、塩の味が料理全体の味を左右する場合は、好みに合わせて自然海塩を選ぶと、複雑な味やコクのある塩の味を楽しめます。
にがりが多く含まれる分、しっとりしているため、食材へのなじみがいいことも特徴です。

岩塩

原料 岩塩
塩化ナトリウムの割合 定めは無し
特徴 工程の表示が「採掘」となっているものは、採掘したままの岩塩を加工したもの。
「溶解」となっているものは、溶かして再結晶させた、さらさらした岩塩。
欧米では調理用の一般的な塩として使われています。
岩塩はミネラル豊富と思われがちですが、にがりの主成分であるマグネシウムは海塩にだけ含まれるもので、実は海塩よりもミネラルの少ない場合がほとんどです。
使い方 採掘したままの岩塩は溶けにくく、粒も粗いので、下ごしらえやまんべんなく味を付けたいときには向きません。
ステーキの仕上げなど、塩粒の味を残してアクセントに使いたいときにおすすめです。
溶解した岩塩は、食塩と同じ感覚で万能に使えます。

減塩しお

原料 海塩
塩化ナトリウムの割合 定めは無し
特徴 血圧上昇につながる塩化ナトリウムの代わりに、同じような塩味を感じる塩化カリウムを入れることで減塩しています。
カリウムが添加されているので、腎臓疾患のある方は医師への確認が必要です。
使い方 減塩しながら、塩気をつけたいときに。減塩しおの場合、保存性を高めたりアクをとったりなど、塩気をつける以外の塩の効能は薄くなる可能性があります。

豆知識

塩のパッケージには、「あら塩」と書かれていることがよくあります。 あら塩とは、にがりを多く残した塩のことを指す場合や、塩の粗さについて指す場合もあり、塩の種類として明確な定義のある言葉ではありません。

味の違い

味の決め手は粒の大きさとかたち、にがりの量

塩は、粒が大きいほどゆっくり少しずつ溶けるので味がまろやかに、細かいほどすばやくたくさん溶けるので塩味を強く感じます。
また、フレーク状の塩のように形状が複雑な塩も、塩味を強く感じます。

にがりの量が多いと、ただの塩味ではない、複雑な味やコクが生まれます。
粒の大きさやかたちは目で見て判断、にがりの量は塩のパッケージ裏の成分表を見て、含まれるマグネシウムの量から判断できます。

実は、原料や製法だけで、塩の味を区分するのは難しいものです。
例えば岩塩でも、粒が大きいとまろやかですが、細かいと塩味が強くなります。
原料や製法、塩の種類などを参考にしながら、料理に合わせて好みの味の塩を探してみてください。

料理における主な効能

塩の主な効能として、水をひきつける力「脱水性」と、保持する「保水性」の両方の働きがあります。
また、「浸透圧」という水分の多い食材から水分を抜き取る効果もあります。
尚、砂糖も親水性と浸透圧の作用をもちますが、どちらを使うかは、仕上げたい味によって使い分けたり、一緒に使うことで効果を高めます。
浸透圧は、砂糖よりも塩の方が、少量で高い効果が得られます。

  • 塩気をつける
    魚の塩焼きなど、シンプルに食材の味を引き立てながら、食欲をそそる塩気がつきます。

  • 柔らかくする
    魚に塩をふると、水が出たあと塩が身の内部に広がり、たんぱく質が溶けることで水分を多く保ち、しっとりした質感に。

  • 保存性を高める
    食品の中の水分を塩が抱え込むことで、微生物が水分を利用しにくくなり、繁殖を抑えて保存性を高めます。そのため、保存をきかせたい梅干や干物などには、塩が使われます。

  • 旨味を引き出す
    漬物に大量の塩を用いるのは、塩気をつけるだけでなく、浸透圧によって野菜の水分を抜き、旨味を引き出すためです。

  • 臭みをとる
    魚や肉を調理する前に塩を振りかけると、浸透圧の効果で余分な水分と一緒に臭み成分が排出されます。

  • アクをとる
    ほうれん草に含まれるシュウ酸など体の害になるアクは、塩を入れて茹でると、浸透圧の効果で排出されます。この時の塩水は、塩分濃度0.5%がおすすめ。
    アク抜きについて詳しくは、こちら

  • 味を引き締める
    煮物や炊き込みご飯などで味がぼんやりしているときには、塩を入れると引き締まります。

  • 甘みを引き立てたり、酸味をやわらげる
    スイカに塩をかければ甘く感じたり、酢飯に塩を入れると酸っぱさが和らいだり、相反する味覚を抑えたり引き立てることにも使われます。

  • 変色、色落ちを防ぐ
    酸化酵素の働きを抑える効果があるので、青野菜を下茹でする際に塩を加えると色よく茹でることができます。また、りんごの切り口を塩水に浸すと、変色を抑える効果があります。この時の塩水は、塩分濃度0.5%がおすすめ。
    下茹でについて詳しくは、こちら

豆知識

塩は砂糖よりも分子が小さいので、塩を先に入れてしまうと砂糖が染み込みにくくなってしまいます。そのため「さしすせそ」の順番どおり、砂糖を最初に、塩はその次に入れることがおすすめです。
また、減塩しおの場合、保存性を高めたりアクをとったりなど、塩気をつける以外の塩の効能は薄くなる可能性があります。

塩を健康的に活用するコツ

人間の体には、一定の割合で塩分が含まれており、生命維持活動に欠かせない機能を担っている成分です。
その一方で、塩分の過剰摂取は、高血圧などの生活習慣病の引き金に。
一日あたりの塩分の摂取目安は、男性が8g、女性が7gとなっていますが、実は和食は塩分が多くなりがちです。
例えば下ごしらえで臭みをとりたいときには、塩の代わりに生姜と酒を使う、煮物は出汁をきかせるなどの工夫をすることで、美味しく減塩することができます。


保存方法

賞味期限はありませんが、かたまりやすいので、温度や湿度の変化の少ない場所での保管がおすすめ。
特ににがり、つまりマグネシウムの多い塩は元々しっとりしている上、湿気を吸いやすいため、湿度には注意が必要です。
また、塩はにおいがつきやすいので、強いにおいのするものの近くは避けて、密閉容器などを使用するといいでしょう。

おすすめの道具


※参考文献:お塩のお役立ちWEB(食用塩公正取引協議会)、塩の情報室、伯方の塩、
塩百科(塩事業センター)、日本海水、天塩

監修

女子栄養大学生涯学習講師
弥冨 秀江(いやどみ ひでえ)先生

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