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宋艸窯の工房を訪ねて

宋艸窯の工房を訪ねて

鹿児島県姶良(あいら)市に工房を構える「宋艸窯(そうそうがま)」。
うつわのかたちを大切に、シンプルなしま模様
「鎬(しのぎ)」だけがあしらわれた陶器をつくっています。
うつわを彩るのは、ありそうでない個性的な釉薬。
手仕事で生まれる自然な表情の豊かさが魅力です。

おおらかで、どんな料理も受け止めてくれる宋艸窯のうつわ。
その裏側には、生き生きとものづくり取り組むつくり手の姿がありました。




1. 宋艸窯の魅力

宋艸窯 商品全体

▲宋艸窯の鎬のうつわ。色とりどりなのに、不思議と落ち着いた雰囲気を醸し出しています。

しのぎのお碗 緑

▲何気ない毎日の食事を引き立ててくれます。「しのぎのお碗 緑」を使用。

しのぎ平皿 中 紺

▲シンプルだからこそ、盛り付ける料理やスタイリングによって雰囲気が変わります。「しのぎ平皿 中 紺」を使用。

土ものならではの温かく力強い質感をもった、宋艸窯のうつわ。
さまざまな作風のものがつくられているなかで、
cotogotoで取り扱っている「鎬(しのぎ)のうつわ」は、
飯碗や平皿、マグカップなど、5つのかたちで展開され、
和にも洋にも合う、素朴なかたちと懐の深さが魅力です。

鎬

▲少しずつ間をあけて土を縦に削ると、凹んだ線と線の間の盛り上がったところが際立ち、鎬が生まれます。

装飾は、うつわの表面を削って
凹凸をつけることで表現されるしま模様「鎬」だけ。
一つ一つ手で施された鎬は、
手仕事ならではの微妙なゆらぎがあり、おおらかな表情です。

5色

▲左上から「マット赤」「紺」「緑」、右上から「白(粉引)」「わら白」の5色展開です。

色は、「白(粉引)」「ワラ白」「マット赤」「緑」「紺」の個性豊かな5種類。
「白(粉引)」は、素地の上に白い泥状の土を掛けてから、
透明の釉薬で仕上げる「粉引(こひき)」という技法を用いたもの。
「わら白」は、藁を用いた釉薬を使い、灰色がかった自然な白色。
艶を抑え、落ち着いた可愛らしさに仕上げた赤色は「マット赤」。
こっくりと深い緑色の濃淡が美しい「緑」。
そして、濃い瑠璃色が、とろんと溶け出したような「紺」。
どれも伝統的な釉薬をベースに、試行錯誤を重ねて生まれた味わい深い色合いです。
シンプルなかたちだからこそ、特徴的な釉薬がしっとりと映えます。

しのぎマグカップ 赤

▲「しのぎマグカップ マット赤」でコーヒーを。
重くなり過ぎないようにつくられているので、手に過度な負担がかかりません。
電子レンジで温め直しができるので、最後まで美味しくコーヒーを味わえます。

また、電子レンジでの使用が可能で、
現代の暮らしの中での使いやすさも抜群。
さらにはオーブンでも使えるので、
お肉をのせた平皿ごと香ばしく焼いたり、
そば猪口をココットのように活用してスフレやプリンをつくることも可能と、
料理の幅を広げてくれます。

重さにも気を使い、安定感のある重さと
手にしやすい軽さの絶妙なバランスを探っています。

個性がありながらも主張し過ぎず、使い勝手のいいうつわ。
暮らしにすんなりと溶け込むその様は、程よく肩の力が抜けていて、
まさに自然体という言葉がよく似合います。
素朴でおおらかな空気が、毎日の料理をそっと引き立てるのです。

二代でつないだ50年

宋艸窯 工房外観

▲のどかな住宅街にある、緑溢れる三角屋根の建物が宋艸窯の工房です。

桜島が浮かぶ錦江湾(きんこうわん)をぐるりと囲む鹿児島県。
鹿児島市から桜島を眺めながら、
海沿いに北上したところにある姶良(あいら)市の住宅街のなかに、
宋艸窯は小さな工房を構えています。

竹之内琢さん

▲朗らかな笑顔が印象的な、宋艸窯の二代目・竹之内 琢さん。

「ここ宋艸窯は、今からちょうど50年前の1967年に、
僕の親父さんがはじめた窯元なんです」と、
私たちを笑顔で迎え入れてくれたのは、竹之内 琢(たく)さん。
宋艸窯の二代目であり、鎬のうつわのつくり手でもあります。

竹之内さんのお父さんである彬裕(あきひろ)さんは、鹿児島市出身。
元々絵を描くことが好きで、焼き物に興味を持ち、
鹿児島市の工芸研究所などにて陶芸を学びます。
その後独立し、当時から住んでいた姶良市にて宋艸窯を開窯します。

宋艸窯 看板

▲工房に設置された、宋艸窯の看板。

「宋艸窯」の名前は、
陶磁器の全盛期と言われる中国・宋の時代にあやかった「宋」の字と、
草のように根を張っていこうと、「草」の旧字体である「艸」の字を組み合わせたもの。
その名の通り、さまざまな作風の優れたうつわが生まれた宋の時代のように、
あらゆる技法を柔軟に取り入れ、地道に焼き物の道を歩んできました。
「うちは代々陶芸家の家系というわけではなく、
親父さんが一人で好きにはじめたことだから、
特に師匠という立場の人に就くこともなく、
自分の興味関心を追求して創作活動を行ってきたみたいです」。

一方で二代目の竹之内さんが陶芸をはじめたのは、32歳頃のこと。
実は若い頃、陶芸には全く興味がなかったという竹之内さん。
しかし幼い頃よりものづくりは好きだったので、
石川県の金沢美術工芸大学に進学して鋳金(ちゅうきん)を専攻。
卒業後は、京都で彫刻家のアシスタントなどの仕事をしていました。

そんな竹之内さんを変えたのが、大阪の展覧会で出会った一つの焼き物。
昭和時代に茶陶の世界で成功し、近代陶芸の父とも評された、
川喜田半泥子(かわきた はんでいし)氏の作品でした。
土という素材や表現方法に感銘を受けたことで陶芸について見つめ直し、
「焼き物っていいな!」という想いが初めて生まれたと言います。
「鋳金の制作は、専用の設備をもつ工場などを間借りして行うことが多く、
その点、陶芸なら自分の親父さんのように個人で工房をもち、
粘土を練るところから成型、焼成まで全部自分が関わることができる。
それに、鋳金ではオブジェなどを中心につくっていましたが、
陶芸ならうつわのように自分の暮らしでも使える
身近なものがつくれるのもいいなということに気づいたんです」。

この出会いをきっかけに竹之内さんは陶芸の奥深い世界に魅了され、
実家に戻ってお父さんに師事し、作陶に励むこととなります。

“好き”を大切に生まれた、鎬のうつわ

宋艸窯 ギャラリー

▲ギャラリーには、竹之内さんとお父さんがこれまでにつくった作品が並びます。
上段は主にお父さんのもの、下段は竹之内さんのもの、そして中段は2人のものが混ざっています。

工房に併設されたギャラリーには、
これまで竹之内さんとお父さんの親子二代がつくってきた
うつわがずらりと並んでいます。
その色やかたち、技法は驚くほどバラエティに富んでいます。
「親父さんは、焼き物の基本は教えてくれましたが、
後は自分がつくりたいようにつくれというスタンス。
親父さんがつくってきたものを、僕にもつくれと強制することはありません。
だから、お互いが好きなものを好きなようにつくっています」と、
お互いに干渉することなく、自由なものづくりをモットーとしているそう。

パイ皿

▲鎬のうつわの原点となった「パイ皿」。まっすぐに立ち上がった縁の部分に、鎬が施されています。

しのぎ平皿

▲「パイ皿」を見たお客さんの注文から生まれた「しのぎ平皿」。

興味の赴くままに、さまざまな作品づくりに取り組むなかで、
2007年頃に竹之内さんから生まれたのが、鎬のうつわ。
「元々、湯呑に鎬を施したことはあったのですが、
その頃ふと思いついて、立ち上がりの部分に鎬を入れた
『パイ皿』をつくってみたんです。
それを見たお客さんから、同じような鎬のデザインで、
リム付きの平皿はつくれないのかってお願いされたんです」。

一般的な洋皿はリムの幅が広く、食べ物をのせる部分が少なめ。
この鎬のうつわなら、リムを細くしても、
鎬の存在感でバランスがとれるのではないか。
そんなお客さんの声に応えて生まれた「しのぎ平皿」は好評で、
同じ鎬を施した飯碗やマグカップなども制作。
それらが、鹿児島出身で東京でセレクトショップなどを営む
「ランドスケーププロダクツ」の代表・中原慎一郎氏の目に留まり、
氏が主宰した鹿児島のいいものを紹介するイベント「さつまもの」を通して
県外での知名度が増します。
それまでは鹿児島県内での販売がほとんどでしたが、
展示会などへの出展もあり徐々に取り扱い店が増え、
鎬のうつわは全国にファンを持つようになりました。

宋艸窯 鎬のうつわ

▲鎬のうつわのカラーバリエーションは8色。
手前左から「マットベージュ」「マットブルー」「マット黒」の3色は、
cotogotoでは実店舗にて開催の「宋艸窯展」期間中のみお取り扱いしています。

「鎬は、うつわのかたちを活かしながら、
表情をつくれるところが好きなんです」と鎬の魅力を語る竹之内さん。
「一番大切なのは、自分が使いやすいものをつくること。
自分で使ってみて、一番いいな、好きだなと思える色やかたちを選びました」と、
自らの感性を信じて歩んできた道のりを振り返ります。

こうして生まれた鎬のうつわは、どのようにつくられているのでしょうか。
工房を案内していただき、
うつわができるまでを見学させていただきました。

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