伊賀土鍋の工房を訪ねて | 工房訪問 | cotogoto コトゴト - ページ3
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於福鍋ができるまで

於福鍋ができるまで

土鍋ができるまでの行程を、見せていただきました。
どこにも手を抜かず、心を込めて、ひとつひとつ丁寧に作られています。

作り方

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1.真空土練機(どれんき)で粘土を練る

「まずはこの、真空土練機という機械で、
粘土を練ります。ここで真空状態にして、
余分な空気を抜いて、土の粘りを出すんです。

木節(キブシ)粘土と蛙目(ガイロメ)粘土など、
違う種類の土や、違う土山の粘土は、
半分ずつ混ぜて。
あと、粘土が硬いときは水を足して、
柔らかいときは固めのを足して。
粘土が均一になるまで、何回も通します。
そうするうちにどんどん粘りが出てくるんです」。

この作業は昔、足や手で行っていたのだそうです。

「人の手で練る『菊もみ』っていう
菊の花のように仕上がる練り方があるんですけどね。
これが大変で……。僕は苦手です(笑)。
これがなかったら、土鍋30個もつくれなかったかもなぁ」。

そう言いつつも、真空土練機から出てきた粘土を、
一回にろくろに乗せる分だけ計り
最後は鮮やかな菊もみを披露してくれました。

作り方

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2.ろくろへ

「今日は土鍋の小を作りますね。

ちゃんと設計図があるんですよ。
勘違いしたり、忘れたりしちゃいけませんからね。
重さとか寸法とかが細かく書いてあります。
毎回確認しながらつくってますよ」。

どこか照れたような笑顔でそう言ったあと、
ふいに真顔になり「水分が30%だから……」と、
設計図と粘土を交互に見ながら、
独り言をつぶやき、しばし沈黙。
聞こえてくるのは、セミの声と、電動ろくろの回る音。
柴本さんの手の中で、
土の塊がみるみるうちにかたちづくられていきます。

「これがトンボ。物差しみたいなもん」。

土鍋の胴体部分の成形が終わると、笑顔が戻って、
竹とんぼのようなかたちをした道具を見せてくれました。
それを使い、内径を計るそうです。
狂いがないことを確認すると、
両手を「ピース」のかたちにして、
手のひら側を上に向け、
土鍋の底の部分を両側からはさみ、
ろくろから横の台へと
成形が終わった土鍋を移動させました。

「いつもは小さいカメ板の上でつくって、
カメ板ごと移動するんだけど、
今回の土鍋は薄くつくっていて軽いから、
手で持って移動ができるようになったんですよ」。

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3.ふたをつくる

「次はふたをやりますね。
『棒引き』っていって、粘土の大きな山を作って、
5、6個一気につくっちゃいます」。

また、沈黙。
あっという間に、細長い粘土の塊が、
5、6個の土鍋のふたとなっていきました。

「で、今日の成形はここまで。
今つくったのは、丸一日くらい乾燥させるんです。
基本的には、前の日に作ったら、次の日に削ります」。

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4.削る

「次は削りです」。

前日に成形した、棚にずらりと並ぶ土鍋のひとつを
ひょいとろくろに乗せると、
それまでの成形のときの音とは違う、
「シャーッ」という、あまり聞き慣れない音。
それは、一日置いて、乾燥した土鍋を削る音です。

「季節によって、土の乾燥のしかたが違うんですよ。
だから、削りやすい時期とそうでない時期があります。
削りやすい時期は、1時間に15〜20個くらいできますね」。

そして、みるみるうちにリボンのような薄い土が
削り出されていきます。

「削り出した土は捨てません。
今はもう貴重な伊賀の土ですから。
また土練機を通せば使えるんです」。

指先ほどのちいさなかけらでさえ、
大切に拾って、傍らの洗面器に入れていました。

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5.道具のこと

「必要な道具は全部つくるんです。
ものによって、変わりますからね。
今回の土鍋は薄く、軽いものにしたかったから、
このコテがポイント。
これで、底のアールを削るんです」。

たくさんの手づくりの道具がろくろの横にずらりと並び、
鮮やかな手付きで次々と道具を持ち替え、
土鍋が削られていきます。

そして、ろくろが止まりました。
すると、削ったばかりの底の部分をコンコンと叩く音。

「音で厚みを確認するんですよ。
その日の乾燥具合で、柔らかさが変わるから、
厚みが微妙に変わってくるんです。
特に火の当たる底部分には
一定の厚みがないとダメですから、気を使います」。

手と手づくりの道具、職人の勘。
機械を一切使わず、目と耳、経験によって
こうしてひとつひとつ確認しながら
つくりあげられていく土鍋。

使う前から、信頼できる気がしてきます。

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6.持ち手(耳)をつける

「削り終わったら、すぐに耳をつけます」。
と、取り出したのは洗面器。

「削ったばっかりはまだ柔らかいから
型くずれしやすいんです。
この洗面器がちょうどいい大きさだったから。
これに乗せるといいんです」。
と、はにかみ顔。

あるものを使い、なければつくる。
柴本さんの工房に、無駄なものは一切ありません。

そして、「耳」になる粘土を細く棒状に伸ばし、
柴本さんの指の幅に合わせて少し平らにします。
「物差しを使わなくても、均一な幅にできるから
自分の指の幅に決めちゃいました」。

そして、耳をつける部分にドベ(水気のある粘土)を塗って、
くし目を入れて、くっつけます。
こうするとしっかりと耳がくっつくのだそうです。
耳と胴体の継ぎ目をなじませたら、耳付けは完了です。

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7.素焼き

「乾かしただけの状態の生生地を、
700度で焼きます。
それを素焼きと言います。
8時間、この灯油窯で炊くんです。
夏場は、そりゃ、暑いですねぇ」。

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8.撥水材(はっすいざい)を塗る

「素焼きが終わったら、釉薬をかけるんですが、
その前に、釉薬をかけない部分に撥水材をつけます。
これで、釉薬が垂れたりせずに、きれいにかかります。

素焼きの土鍋に真っ青な撥水材を塗ると、
なんだかまったく別の鍋のよう。
撥水材は鼻につんとくる匂いがしました。

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9.釉薬の調合

「釉薬は濃度の比重を合わせないといけません」。
と、石灰の釉薬をバケツに移します。
そして、濃度計を浮かべて濃度を確認。

「純粋な水の濃度は1.00なんですけど、
釉薬は1.63〜1.65くらいになるようにします。
正しい濃度になっていないと
ピンホール(気泡によって釉薬が付着しない部分)が
できやすくなるんです。
特に黒飴のほうはピンホールが目立ちやすいので、
濃度があっていても2重がけしています。

今回の2色はどちらも魅力的ですよ。
石灰は、食材が映えるし、使ううちに
貫入(かんにゅう/釉薬に入るヒビのように
見えるもの)のところに色がついていって、
変化を楽しめます。
黒飴は渋いでしょ。長く使えますよ。
飴のような透明感は伊賀の釉薬ならではです。
男性にも人気がありますね」。

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10.釉薬をかける

バケツで濃度を計った後、釉薬をたらいに移し、
その中に土鍋の胴体をゆっくりとつけます。
土鍋の内側には、柄杓を使って流し込みます。
ひととおりかけ終わったら、台の上で確認します。

「釉薬がまとまってかかってしまったところがあると
『釉はげ』になる可能性があるので、
そういうところがあったら
筆を使って細かくなじませます」。

成形時はもちろん、釉薬の段階でも、
ひとつひとつの確認を怠ることはないのです。

1個つくろうが、100個つくろうが、
こうしてひとつひとつの行程が
丁寧に、丁寧に行われています。

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11.本焼き

「そして、本焼き。
釉薬をかけ終えたものをまとめて焼きます。

1220〜1240度くらいで、15〜16時間かけて焼くんです。
朝、火をつけて、夜中の8〜10時くらいまでかかります」。

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12.完成

本焼きが終わると、ようやく於福鍋の完成です。

石灰と黒飴、どちらにするか選びがたい、深みのある色合い、
普通の土鍋に比べると、驚くほど軽いふたと胴体。

そして、こんな風に丁寧につくられていることを知ると、
よりいっそうの愛着がわきます。

使うほどに変化がみられる、今は貴重な伊賀の土と釉薬をつかった土鍋。 長く長く、使っていきたいものです。



>> 完成した土鍋はこちら

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