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UTOの工房を訪ねて

UTOの工房を訪ねて

2018年6月公開

激しい消耗や過酷な環境にも耐えられるようにつくられたミリタリーのテントやバッグ、
古いものでは100年も経っているような、ヴィンテージの生地や道具などに魅力を感じ、
独自の感性でものづくりに取り組む吉川朋典さんと木村友香さんのユニット、UTO(ユート)。
帆布、麻、革など、使い込むごとに味わいを増す現代の素材も取り入れながら、
バッグやエプロンといった日々の道具を製作しています。

UTOのものづくりの裏側にある思いや過程を取材するために、
緑に囲まれた岡山県北部にある、二人の美意識が凝縮されたような工房を訪れました。

素材を大切にした、UTOのものづくり

UTOの真骨頂は、何と言っても二人がリメイクと呼ぶ再構築で発揮されます。
何かの目的のためにつくられ、使われた素材が、その過程を経てまとう存在感。
そういった古い物の迫力や味わい深さをまず誰よりも受け止めているのが二人であり、
その魅力を最大限に伝えるための試行錯誤に真摯に向き合っています。


だからこそ、ユニット開始以来現在に至るまで
工場で量産してもらうことはせず、
全ての商品の裁断、縫製、
更には洗い加工まで自ら手掛けています。

例えば70年前の鞄のリメイク。
ほとんどはそのまま使うには適さない状態に消耗されています。
ただ、そういった古い素材のみが持つ魅力があるのも確か。
その魅力をそのまま生かすために、
70年前の生地を素材として
新たに仕立て直すことをするのだそう。


パーツが継ぎ合わされたり、重ねられたり、
どちらかというと一般的に足し算のイメージが強いリメイクですが、
UTOが目指すのは大胆な引き算も厭わない、「普通」の道具。
ヴィンテージ感を前面に出すより、
昔の素材も、味わいのあるパーツも、
日々の道具として違和感なく溶け込んだバッグやエプロンには、実用品としての美しさが宿ります。

一枚の布からではなくかたちあるものを素材につくるとき、
まず何につくりかえるかを考え、そしてどのパーツを残すかを考えるのだそうです。
バラすという一種の対話作業の中で、新たなかたちのヒントをもらうこともあるのだとか。
味のあるステッチがあたかも意図的に入っているように配したり、
生地の変色した部分が自然に見えるよう、パズルさながら組み替えたり。


納得いくまで繰り返される試作と修正から生まれるUTOらしいかたちと佇まい。
それは、現代の素材から生まれるものにも共通して言えることです。
素材が長く生かされるデザインを求めるうちに、
不思議と使い勝手のよさにつながっていることも多くあるようです。

使いやすく蘇ったワークエプロン

昔のアメリカ海軍の機械工が使用していたエプロン、
「M-71 WORK APRON」。
10年程前にオリジナルのエプロンを入手した時に、
その魅力に圧倒され、再現することになったのだとか。

ただ、再現したいのは「M-71らしさ」であって、
オリジナルの忠実なコピーではないのです。
目指すのは、あくまでも現代のあらゆるシーンで使いやすいもの。

例えば、通常は平面的なエプロンが、
ポケットの激しいパッカリング(皺)により立体感を増し、
力強い表情になるのはM-71の魅力のひとつ。

▲左がUTO M-71WORK APRON(新品 size:1)、 右がオリジナルのM-71です。


パッカリングそのものは強度を上げるために、
本体の縦の布目に対してポケットを横目に付け、
繊維の方向の違う布を重ねた結果、伸縮率の違いによって現れたもの。
単純なデザインとしてのよさだけでなく、本来の目的にも敬意を払いながら、
ポケット部分のパッカリングのバリエーションにも、こだわったのだとか。

そして着用したときに生まれる立体感。
ポケットの形状、サイズ、その位置が見せる表情。
M-71の胸ポケットをそのまま付けたように見えて、
実は縦横のサイズバランスやペン差しのステッチラインなど、
すべてこのエプロン用につくり直したそう。

使い心地への気配りは、紐部分にも現れています。
まず。首掛けではなく、背中で交差する肩掛けタイプにして
首への負担を減らしました。
さらに革製のアジャスターを加えることで、
肩紐がズレ落ちることもなくなり、
さらには体型にあったフィット感が得られます。

また、別生地のテープではなく、
共布を1本1本紐状に縫製して使うことで、
絡みにくさや丈夫さを実現しました。

注目すべきもうひとつのポイントは、
使われることによってのみ、現れる色味。
エプロンには、敢えて色落ちし変化する
素材が使われているそう。
例えばチャコールブラック(炭黒)は、洗えば洗う程、
当初は黒であった生地がグレーに近づいていきます。

まるでシワの部分が程よく色落ちして
味わいがよくなるデニムのよう。
実際に使われた生地に見られる自然な色落ちには、
製造時に加工された「ダメージデニム」には決して現れない
本物の美しさ、格好よさがあります。

日々の仕事の中で幾度となく洗われて、
はっきりとしていた色が何かの中間色のようになるとき。
例えば、カーキなのか茶色なのか、
一言で言い表せられないような色合いに育つとき。
それを、UTOでは「色無き色」と呼んで、
一つの指標としています。

ピッカピカの新品のときよりも、
むしろ使い込まれて色や手触りのよさが増す素材。
UTOの二人が選ぶのは、そんな素材ばかりです。

▲UTO M-71WORK APRON(約4年使用 size:2)、右がオリジナルのM-71。UTOの方も経年変化し、オリジナルの雰囲気により近づいています。

こだわりを詰め込んだトートバッグ

一見さり気ない、何気ないトートバッグ。
でもそんなトートバッグにも、やはり並々ならぬ思いがあり、
敢えて言わないと使う人も気づかないような、
密かなこだわりもたくさんあるのだそう。

まずは、両サイドのみを縫った袋状になっている内ポケット。
一見すると下部の縫い忘れとも思われるこの部分は、
表面にステッチを出さず、なおかつ厚みのある物でも
ストレス無くするりと入るよう、
マチに柔軟性を与えるためのデザインなのだとか。
なるほど、水筒も、するりと入ります。

次に、一番使われる部位であるハンドルは、
何度か改良を繰り返した後、今のかたちに落ち着いたそう。

参考にしたのはヴィンテージのキャンバスバッグ。
細い糸でしつけ縫いが施されていることを応用し、
ハンドルの外べりに、ステッチ糸に並走させるように
強い化繊の細い糸を沿わせました。
それにより、強度が上がるのはもちろん、
ごく僅かながらハンドルが丸みをおび、握りやすくもなるそうです。

UTOのバッグに関するもうひとつのこだわりは
ハンドルの大きさを、
バッグ本体のサイズごとに細かくつくり変えていること。

逆にそれをしないと、小さいサイズほど
全体の大きさに比べてハンドルが大きくなったりして、
アンバランスな印象になってしまうのだとか。
UTOのバッグはすべてのサイズで
見た目のバランスが変わらないのですが、
実はこれ、珍しいことなのだそうです。

そして、最後に、マチの三角。
三角、とは、マチをつくるために
両脇底面の角を畳み込んで出来上がる部分のこと。
100年以上前のキャンバスバッグにも
見られる仕上げを見習ったそうで、
3つのこだわりの中でも、一番思い入れのある部分なのだとか。

布製のバッグは、どうしても角が痛みやすく、
糸のほつれなども目立つもの。
そこで、この、どこか「ゆるさ」の感じられる三角の出番になります。
実はきっちりと直線で縫い上げてしまうと、
箱のように尖った角からスレて傷み、破れやすくなります。
逆に布にゆとりを持たせ、
角に隙間を開けてクッションをつくることで、
角が曖昧になり、
1ヵ所が目立って傷んだりすることが軽減できます。

素材が布なのでいずれは破れることもありますが、
少しでも長く使っていただけるように、という気持ちで
つくり続けているのだそう。


使い続ける喜びを教えてくれるミトン

そんな古いものを愛し、古いものから学びながら
今の私たちの感性に響くものづくりをする「UTO」に、
cotogotoから「ミトン」の制作をお願いしました。


素材はやっぱり帆布。
「M-71 WORK APRON」と同じ生地です。

どことなく無骨な雰囲気は、
昔のミリタリーのパイロットが使っていた
ミトンをイメージしているから。
オーブンから熱々の鉄板を取り出したいときなどに、
しっかり厚手で、腕までカバーしてくれる安心感があります。

手の平側と甲側に布のつなぎがあるのも、もちろん意図的です。
特に熱が伝わるところを、部分的に布を重ねて厚くしました。
手の平側には、昔から断熱素材として
使われているジュートも縫いこんでいます。

何度かcotogotoのスタッフともやり取りを重ねて、
掴み易さ、使い勝手など改良を加えてくださいました。
使い始めは少しかたくてごわごわと感じるかもしれませんが、
使うほどに自分の手に馴染み、フィット感が増していきます。


経年変化を通じて現れる色無き色、心地よさ、格好よさ。
それは素材がヴィンテージであっても、現代のものであっても変わらず、
UTOのものづくりは、何年も使われたその先の姿をいつも思い描いています。


汚れたり、くたっとしたり、実はそこを超えてからがよいのだから、
表面的な汚れや変化、小さなダメージは気にせず、
とにかく使い続けてください。
二人からのメッセージです。

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