小さく愛らしい張り子の鯉のぼり

ほのぼのと心和む、小さくて愛らしい姿。
福島県郡山市の郷土玩具づくりの集団「郡山KARAPPO」に張り子制作と絵付け、デザインを岩手県の切り絵作家、滝田雄依（たきた ゆい）さんにお願いしてつくったオリジナルの「小さな壁かけ鯉のぼり」です。

小ぶりで軽く、吊るすだけだから気負わず飾れる。
それでいて、パッと目につく明るい色合いが、節句祝いの喜びを鮮やかに彩ってくれます。

切り絵の手法を活かしたデザイン

特筆すべきは、張り子の雰囲気に合うよう、いくつもの試作を重ねてたどり着いた滝田さんならではの温かみのあるデザイン。
鯉のぼりの伝統的な黒、赤、青の３色を踏襲しつつ、切り絵のデザイン手法を活かした手跡を感じるかたちを絵柄に取り入れています。

お腹の模様は、黒い真鯉が半月、赤い緋鯉が満月、青い子鯉には双方をミックスしたかたち。
父母それぞれのいいところを子が受け継いでいるイメージです。
そのフォルムに合わせて、張り子人形にしばしば使われるような、明るい黄色の模様を施して、はつらつとしたアクセントに。
子どもの成長と健康を願う鯉のぼりらしく、元気よく鮮やかな色合いに仕上げました。

デコ屋敷で一つずつつくられる張り子人形

「郡山KARAPPO」の拠点であるデコ屋敷は、だるまや招き猫、ひょっとこ面など、色とりどりの郷土玩具が雑多に並ぶ古い日本家屋。
「デコ」とは人形を意味する「木偶（でく）」が訛ったものです。
すなわち、デコ屋敷とは張り子人形をつくる工房のことを意味します。
江戸時代から張り子をつくり続けてきたデコ屋敷で、職人たちが一つずつ絵付けしています。

張り子ならではのふっくらとした丸みや、凹凸のある感触が手に心地いいです。

一つ一つ絵付けされているので、手仕事ならではの筆の跡にも温もりを感じます。

場所をとらずに気軽に飾れる小ぶりなサイズ

３匹一緒に片手にのるほどの小ぶりなサイズに仕上げました。

３匹が糸で繋がっているので、フックや釘、画鋲で壁などにかけて楽しめます。
季節のあしらいとして、男の子のいない家でも、カジュアルに飾ることのできる気軽さも魅力です。

鯉たちのほのぼのとした表情と正面から向き合ってみると、思わず笑みがこぼれます。
屋根より高くはなくても、愛らしく節句を祝う、今の暮らしにしっくりくる鯉のぼりです。

鯉のぼりの制作の舞台裏をご紹介！

今の暮らしにすっと馴染んで飾りやすい鯉のぼりをつくりたいと、張り子のつくり手とデザイナー探しからはじまった鯉のぼりづくり。
デコ屋敷でのものづくりの様子もお届けします。

郡山KARAPPO／からっぽ について

江戸時代からおよそ300年にわたって、張り子人形をつくり続けてきたデコ屋敷の四つの工房が参画し、若手職人と、デザイナーや行政職員、学生らが立ち上げたのが「郡山KARAPPO（からっぽ）」。
ちょっと風変わりなその名は、高柴地区で、昔から新年を祝うために行われてきた正月行事の七福神とひょっとこ踊りの名人でもある張り子工人の「お面をかぶり、気持ちを無（からっぽ）になるまで踊ることで、新しい自分を手に入れることができる」という一言がヒントになり名づけられました。
デコ屋敷と張り子の工芸品を受け継ぎ広めるべく、新しい張り子の飾り物を生み出しています。

滝田 雄依さんについて

岩手県で切り絵作家として活動する滝田 雄依（たきた ゆい）さん。
独学で学んだ切り絵は、民藝や芹沢圭介さんの型染めが好きという気持ちから、似たかたちで表現したいとたどり着いた技法。
毎年秋に岩手県盛岡市で開かれる「北のクラフトフェア」に2022年の第１回より参加しています。
１枚の紙を切り離さないよう切る一般的な切り絵の手法と異なる、切り出した複数のパーツで構成する作風が特徴。
ひらめきやランダムな偶然性を大事にしながら、静かな存在感で暮らしを彩る作品をつくっています。