うつわの技法 陶磁器 釉薬編
うつわは使い勝手をよくしたり、見た目を美しくしたりするために、
陶磁器や木などの素材ごとに、さまざまな技法が用いられます。
「うつわの技法」では、数ある技法のなかから、
cotogotoで取り扱っているうつわにも使われている技法を取り上げています。
釉薬(ゆうやく・うわぐすり)は、陶磁器の表面を覆うガラス質の膜のこと。
せっ器や土器以外のほとんどの陶磁器には、釉薬が掛かっています。
陶磁器の素地に水や汚れが染み込むことを防ぎ、丈夫で扱いやすくします。
同時に、さまざまな色や質感などを表現します。
釉薬の原料は、長石などの鉱物や木を焼いてできた灰をベースに、
鉄や銅など色を着けるための金属類などです。
これらが焼成されることで変化して、美しい釉薬になります。
うつわの印象を大きく左右する釉薬。
その一例と楽しみ方をまとめます。
-
1.釉薬の種類
原料の組み合わせや調合の割合により、
釉薬の種類は無限に広がります。
また同じ釉薬でも、焼き方や土との
組み合わせなどによって色合いが大きく変化します。
ここでは昔から使われてきた代表的なものを紹介します。
-
透明釉
長石と灰類などを原料にした、ガラスのように艶のある透明の釉薬。
とくに磁器に頻繁に用いられ、素地の白さを活かして透明釉だけを掛けた磁器を「白磁」と呼びます。
絵付けの上から掛けても色を損なわないため、絵付けを施した磁器の仕上げにも。
また、陶器では白い泥状の土を塗った上に、透明釉を掛けて仕上げた「粉引(こひき)」という手法にも用いられます。
絵付けや素地の素材感を活かせる釉薬です。
-
灰釉(はいゆう、かいゆう)
植物の灰をメインに使った釉薬。
稲藁を使った「藁灰釉」は白く濁った色合いになるなど、ベースになる灰の種類によって、さまざまな色合いに焼き上がります。
ちなみに代表的な灰釉に「土灰釉(どばいゆう)」がありますが、これは土の灰ではなく、木の枝や落ち葉などの雑木を燃やした灰からつくられています。
発色させるための金属などが含まれていないので、淡い色合いに仕上がります。 -
織部釉・緑釉(りょくゆう)
銅を加えた緑色の釉薬。
安土桃山時代に栄えた瀬戸の「織部焼」に多く使われた釉薬であることから、織部釉とも呼ばれています。
織部焼とは、千利休の弟子・古田織部が茶の湯で使ったことから広まった焼き物です。
配合によっては、濃い部分が青みがかって見えるなど、表情の豊かさが魅力です。 -
飴釉
鉄を加えた飴色の釉薬。
薄く掛けると淡い黄色、濃く掛けると飴色のようなこっくりとした色合いに。
スリップウェアなどの民芸の陶器に多く用いられ、温かみのある素朴な味わいのある釉薬です。 -
青磁釉
鉄を加えた青緑色の釉薬。
青磁釉を施した磁器は「青磁」と呼ばれ、中国で発展しました。
ひんやりと静謐な印象のある上品な色合いです。
-
-
2.釉薬の楽しみ方
焼きあがった釉薬は、
時にはつくり手の想像を超えるほど
多彩な表情を見せます。
そしてその表情は、うつわの見所「景色」として
鑑賞の対象とされてきました。
以下のような釉薬の特徴に着目すると、
楽しみ方が広がりますよ。-
貫入
釉薬と素地の収縮率の差により、釉薬に生じる細かいヒビのこと。
古くから釉薬の代表的な面白さとして愛されてきました。
使い込むと貫入が色づき経年変化を楽しめます。
また予め、墨などで貫入を色づけして目立たせたうつわもあります。 -
釉だれ
釉薬が焼成中に流れ出して、上から下の方へ垂れた跡。
釉薬によって、釉だれが起こりやすいものと、起こりにくいものがあります。
うつわの表面に動きが生まれ、美しい表情を味わえます。
-
鉄粉(てっぷん)
釉薬や素地に含まれる鉄分が表面に現れる褐色の点のこと。
量産品のうつわなどの場合は、鉄粉が出ないように鉄分を除去していますが、つくり手によっては素材の風合いを出すために、あえて鉄粉が出やすいように工夫しています。
-
釉掛けの指跡
うつわを指で支えて釉薬を掛けると、指の跡が残ることがあります。
一般的には、指の跡は馴染ませて消してしまいますが、つくり手によっては景色として残すことも。
ぬくもりが感じられる手仕事の跡です。
-
※参考書籍:
「釉薬の裏技」炎芸術編集部(阿部出版)
「化粧と施釉の大原則」野田耕一(誠文堂新光社)
「民藝の教科書① うつわ」久野恵一監修/萩原健太郎著(グラフィック社)
「美しいうつわ」成美堂出版編集部(成美堂出版)