野田琺瑯の工房を訪ねて

野田琺瑯の工房を訪ねて

2016年6月公開

強いけれど錆びやすい鉄と、美しいけれど壊れやすいガラス。
その2つを融合させた「琺瑯(ほうろう)」は、
酸や塩分に強く、食材の味を損ねることなく保存ができ、
さらにそのまま直火やオーブンにかけることができます。
調理器具から保存容器、さらにはそのまま食卓に出す器まで、
1つで何役もこなすことができる万能な道具なのです。

栃木県に工場を構える「野田琺瑯」は、今年(2016年)で創業82年。
琺瑯づくりの全工程を自社で行うことができる国内唯一のメーカーです。

戦争や琺瑯業界の長い不況などを乗り越え、
廃れるばかりと思われていた琺瑯を現代の台所の定番にまで押し上げた原動力は、
「琺瑯が好き」という、ただただシンプルな想いでした。




1. 琺瑯だらけ!野田家の台所


冷蔵庫

▲野田家の冷蔵庫の中を見せていただきました!


東京都江東区に事務所を構え、
栃木県栃木市に2つの工場を持つ野田琺瑯。
4代目である野田浩一社長と、奥様の善子さん、
そして息子であり営業企画部長を務める靖智さんにお話を伺いました。

「まずは見てもらったほうがわかりやすいわね」と善子さん。
野田家の台所を覗かせていただきました。

台所はアイデアの源

鍋もごみ箱も琺瑯

▲左は野田家の鍋コレクション。すべて野田琺瑯製。
右は琺瑯のゴミ箱。パンチングの技術が難しく、今では生産されていないものです。


「どこもかしこも琺瑯ばかりでしょう」と善子さん。
台所をぐるりと見渡すと
鍋も、マグカップも、調味料入れも、ゴミ箱も
どっちを向いても琺瑯だらけ!
「キッチンのゴミ箱なんかは汚れたら
すぐ洗いたいものですから、琺瑯製は良いんですよ」と、
カメラを向けるたび、そのアイテムの良いところを
嬉しそうに話してくれます。

使っている道具のほとんどが、
当然ながら野田琺瑯の自社製品。
「台所の道具って、長く使ってみて
はじめて分かることがたくさんあるでしょう。
だから使い続けることは、つくり手としてとても大事。
とは言っても、家業だからというより、
私は琺瑯が好きで使い心地が良いので、
使っています(笑)」(善子さん)。

「私は揚げ物担当なんです」。
浩一社長からぽろりと衝撃の発言。
なんと浩一社長も、
よく台所に立って料理をするのだそうです。
その腕は、善子さんも絶賛。
「カツなんて今火が通った!っていう
絶妙なタイミングで揚げるので、
実に美味しいんです」と、ベタ褒めです。
ご自宅の食事づくりは、大抵一緒にしているんだとか。
「もっとこういう商品があったらいいのにという話になったり、
さらなる改善点が見つかったり、実際に料理をしていると、
いろいろなアイデアが生まれるんです」(浩一社長)。

野田家の台所は、
いわゆる「野田琺瑯の商品開発室」でもあったのです。


食器棚まわり 調味料入れ マグカップ コリンダー

琺瑯は忙しい私の味方

「これなしには、私の暮らしは成り立たないの」と善子さんが太鼓判を押す商品。
それが、保存容器「ホワイトシリーズ」です。

冷蔵庫


野田家の冷蔵庫を開くと、ホワイトシリーズを中心とした大小様々な琺瑯容器がぎっしり。
下ごしらえをした野菜や常備菜、手づくりの保存食など
野田家の食卓に欠かせないものたちが統一感のある空間の中に収められています。
中身が見えないので、ごちゃっと感がなく、
一面真っ白で、清々しいくらいピカピカに輝きを放っています。

深さのある長方形の「レクタングル深型L」には、
洗って切り分けたキャベツや小松菜などの葉物を。
「ラウンド 12cm」は、ハムの保存にぴったりと、
善子さん流の使い分け方があるそう。
「煮豚は『レクタングル深型LL』なら
鍋として煮るところから、保存まで1つでできるので、
洗い物が減って環境にも優しいんですよ」と、
次から次へと自然に使い勝手の良さの話になります。

食材をどんなタイミングで容器に移しているのか伺うと、
「例えば小松菜を買ってきたら、その日のうちに、
洗い桶につけて元気にさせて、
そのまま茎と葉に切り分けて保存しています」と、
その都度、こまめに下ごしらえを済ませてしまうそう。
「下ごしらえした野菜や、つくった料理がすぐにしまえて、
しかも風味を損なうことなく保存できるということが、
とにかく嬉しくて仕方ないんです。
ホワイトシリーズがあることで、
台所仕事が合理的で無駄がなくなりました」と満面の笑み。

冷蔵庫に下ごしらえした野菜や、
温めるだけで食べられる常備菜があれば、
忙しい日でも安心できる。
琺瑯容器に入った食材が冷蔵庫に待っている、
そのことが善子さんを励ましてくれているのです。

冷蔵庫

▲容器にはそれぞれ中身を書いた剥離タイプのシールが貼ってあるので、中身が見えなくても一目瞭然。

らっきょう

▲「鳥取砂丘」のなかには、鳥取砂丘産のらっきょう漬けが入っているそう。もちろん善子さん自家製です。

微凍結室

▲冷蔵庫のなかだけでなく、微凍結室のなかにも琺瑯が。もちろん冷凍庫の中でも大活躍だそうです。

暮らしに欠かせない存在

冷蔵庫のなかだけでも30以上のホワイトシリーズが並んでおり、
一体いくつ持っているのか自分でも分からないと言う善子さん。
「発売当時から10年以上ずっと使っているものもあるけれど、
全然壊れないから増えていく一方なんです」。

野田善子さん

▲「愛情を持って丁寧に扱っているので、我が家の容器は新品のようなんです」と嬉しそうに話す野田善子さん。


「もちろん、琺瑯はぶつけたり落としたら欠けてしまいます。
でも、どんなものだって、使っていたら少しずつ消耗していきますよね。
だから一緒に年をとって、ともに歩んでいけたら」。
善子さんの暮らしを励まし、忙しい日も一緒に乗り越えてきた琺瑯は、
善子さんの人生にとって不可欠な存在なのでしょう。

「不思議なことに、私は琺瑯を商売道具として見るっていう気が無くって(笑)
毎日の暮らしのなかで、琺瑯を使って嬉しいなという気持ちなんです」と微笑む善子さんを見ていると、
とことん琺瑯が好きなんだなあと改めて実感するのです。

そして、この家で生まれ、琺瑯とともに育った靖智さん。
「こんなに琺瑯だらけの環境で生活していたら、
若い頃には、琺瑯なんて俺は嫌いだ!なんて、
ひねくれたりしたんじゃないですか?」と
意地悪く尋ねてみたら、靖智さんは迷うことなく否定。
「むしろ琺瑯の良さをわかってもらえない悔しさや、
材質を知って欲しいという気持ちの方が
強かったです」と笑います。
ご両親と同じく、生粋の琺瑯好きのようです。

野田靖智さん

▲大学卒業後、迷うことなく野田琺瑯に入社し、琺瑯愛を受け継ぐ野田靖智さん。

「趣味の釣りで、さばいた魚の保存に便利だから、自分は『レクタングル浅型』が好きなんです」と、
それぞれの生活に合わせて、欠かせない琺瑯があるようです。

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