2018年8月公開
夏が旬の鯵(あじ)は、美味しく体にいい青魚。
傷みやすいのが難点ですが、保存性を高める昔からの方法のひとつが、
味噌や酒粕などの発酵食品に漬け込むこと。
発酵食品に存在する菌類が魚に含まれるたんぱく質を分解し、
旨味を出すとともに人が消化吸収しやすいかたちにしてくれます。
暑くて胃腸が弱りがちな夏だからこそ、
栄養価が高く消化吸収されやすいかたちで鯵を美味しくいただきましょう。
今回は、発酵食品の中でも味にクセのないヨーグルトを漬け床にし、
食べ方の展開がしやすい「鯵のヨーグルト漬け」を料理人・安田花織さんに教わりました。
塩とニンニク、ヨーグルトの酸味がほのかに利いた鯵は、きゅっと身と味が締まり、
北欧やロシアでポピュラーなニシンの酢漬けを彷彿とさせる味わい。
そのまま食べるのはもちろん、クリームチーズを塗ったパンにのせたり、
茹でたジャガイモと和えても絶品。
アレンジレシピとして、サラダ仕立ての「グレープフルーツと鯵のミントマリネ」と、
火を入れる「鯵ココナッツカレーそぼろ麺」のつくり方もご紹介します。
ヨーグルトは腸内環境を整えて体の新陳代謝を上げる作用もあるので、
漬け床も余すところなく活用します。
体にうれしい成分が豊富な青魚、鯵
鯵には100以上の種類があるといわれていますが、
日本でお馴染みなのは「真鯵」。
漁獲量が多い初夏から夏にかけてが旬とされ、
脂ものって美味しくなります。
胃の冷えを取って胃腸の働きを高めたり、血をサラサラにして
血管を丈夫にするエイコサペンタエン酸や
脳の機能を活性化するドコサヘキサエン酸も豊富です。
教えていただいたのは…
料理人 安田花織さん
生産者の想いや食材の育った風景を食卓に伝える「ヤスダ屋」主宰。在日韓国人の祖母と農家の日本の母の味、二つの豊かな食文化に触れながら育ち、高校卒業後食の世界へ。懐石料理店、オーガニックコミュニティカフェなどを経て2012年独立。繋がりを大切に、国内外問わずできる限り食材の産地に足を運び、食材の育った風景やつくり手の想いを料理に込めています。「ヤスダ屋」として、各種イベントケータリング、出店、お弁当ケータリング、料理教室などで活動。Webサイトにて食材紀行も執筆中。オフィシャルサイトは、こちらから。
材料(つくりやすい分量/
完成量約300g)
- 刺身用鯵(3枚に下ろしたもの)
…4匹分(160g) - 塩…鯵の重量の3%(今回は約5g)
- プレーンヨーグルト…150g
- ニンニク…1片(8g)
- 塩…5g
1.鯵を重ならないように並べることができるサイズのバットに、鯵の重量の3%にあたる塩の半分を振ります。
【ポイント】
先にバットに塩を振っておくことで、鯵をひっくり返す手間が省けます。
2.鯵を並べて、上から残りの塩を振ります。
3.鯵の全体に塩が回るように、ラップを密着させるようにかぶせます。冷蔵庫で30分以上置いて脱水させます。
【ポイント】
鯵から水分を抜くことで、雑菌の繁殖を抑え、くさみや腐敗を防ぎます。
4.ニンニクは包丁の腹などで潰してから、粗目のみじん切りにします。
【ポイント】
ニンニクは、潰してから刻むと細胞が壊れ、香りやエキスが出やすくなります。今回は、ニンニクの殺菌作用も活用したいため、潰してから使います。
5.鯵から出た水分をキッチンペーパーでしっかり取ります。
6.3枚に下ろした鯵は、中央の背骨があたっていたあたりに中骨があります。食べやすいよう骨抜きで抜きます。尾の近くにあるトゲ状のウロコ「ぜいご」がきちんと取れているかも確認し、残っていたら削ぎ取ります。
【ポイント】
塩を振る前でも中骨は抜けますが、塩をする前の生魚は傷みやすいため、この段階で作業するのがおすすめです。
7.密封できるビニール袋にヨーグルト、塩、4を入れ、ビニールの上から軽く手で揉むようにして混ぜ合わせて漬け床をつくります。そこへ6の鯵を入れていきます。
8.平らにして空気をよく抜き、冷蔵庫へ。すぐにでも食べられますが、一晩ほど置くと味が馴染みます。冷蔵で2週間保存が可能です。生で食べる場合は、皮を剥ぐと口当たりがよくなります。
安田さんが選んだ器は…
ピタプレート 7寸 織部
(フォースマーケット)
織部の緑色が落ち着いた印象の平皿。「ガラスっぽい釉薬や織部の色によって、盛りつけるときの風景がつくりやすい器だと思います。緑色が暗過ぎないからオールシーズン使えるし、かたちがシンプルだから和洋中何にでも似合いそう。少しだけ縁が立ち上がっているので、汁があっても対応できるところもいいですね」
旨味の強い「鯵のヨーグルト漬け」は、グレープフルーツやすももなど
酸味のあるさっぱりとした果物と好相性。
「鯵のヨーグルト漬け」の塩味を活かし、味付けはシンプルにして
甘みを加えるナツメグを少々と香りづけのミントを加えてマリネに。
柑橘類やミントなどの香草は気を巡らせる作用があり、
リラックスすることで腸が活性化したり自律神経を整えてくれます。
油は、果物の香りを活かしたいときはクセのない米油を。
オリーブオイルは洋風、ごま油は中華風、ココナッツオイルはほんのり南国の香り……と、
油の種類によって雰囲気が変わるので、いろいろとお試しください。
材料(2人分)
- 「鯵のヨーグルト漬け」
…2枚(70g) - グレープフルーツ
…1/4個(140g) - 紫タマネギ…1/4個(80g)
- 植物油…大さじ2
- 塩…適宜
- ミント…8g
- ナツメグ…少々
- 漬け床のヨーグルト…適宜
つくり方
1. グレープフルーツは房から外し、一口大のサイズにしてボールに入れます。そのうち一かけくらいを潰して果汁を出します。
2. 紫タマネギはみじん切りにし、1のボールに加え、植物油と合わせて塩で味を調えます。
【ポイント】
「鯵のヨーグルト漬け」にしっかり塩味が利いているので、塩は味を見ながら調整してください。
3. 鯵は皮を剥いで、食べやすい大きさに切ります。
4. 手でちぎったミントと3の鯵を2に加え、ざっくり和えます。
5. 食べる直前までしっかり冷蔵庫で冷やして皿に盛り、漬け床のヨーグルトとナツメグを振ります。
安田花織さんが選んだ器は…
気泡皿 中(ガラス工房 清天)
無数の気泡が内在する、琉球ガラスの少し厚手の皿。「気泡が水の中をイメージさせて、魚を盛るのに涼し気です。気泡感は食材では出せないものだから、それが合わさると料理が映えるんです。ぽってりとしていて、どこかあたたかみもあるところもいいですね」
鯵の旨味が染み出た漬け床も余すところなく使いたい。
そんなときにおすすめなのが、漬け床ごと使う鯵そぼろ。
トマトとココナッツフレーク、ガラムマサラを合わせて
暑い夏にぴったりなカレーそぼろに仕立てます。
ごはんの上にのせたり、ツナ缶の要領でポテトサラダや卵焼きに入れたりと万能です。
トマトやタマネギ、パクチーやバジル、紫蘇など好みの具材と一緒に麺にのせれば、
噛みしめるごとにいろいろな味がするエスニック和え麺のでき上がり。
食卓にナンプラーなどの魚醤や酢、唐辛子を用意して、
お好みで足してお召し上がりください。
材料(2人分)
- 「鯵のヨーグルト漬け」
…90g(漬け床含め) - トマト…中玉1/2個(60g)
- ガラムマサラ(またはカレー粉)
…大さじ1 - ココナッツフレーク…大さじ2
- 好みの乾麺
…160g(茹で上がり360g目安) - 植物油…大さじ1
- 塩…小さじ1/4
- トマト…中玉1/2個(60g)
- 紫タマネギ…1/2個(60g)
- 生姜…適量
- パクチー…2株
- バジル、紫蘇など…3~4枚
- ピーナッツ…大さじ2
- レモンまたはライム…1/4個
- 干しエビ…大さじ1
- 魚醤、酢、唐辛子…適宜
(鯵ココナッツカレーそぼろ)
(麺)
(その他の具材)
※「その他の具材」は、お好みで内容や量を変えてください。
つくり方
1. トマトをざく切りにして、「鯵のヨーグルト漬け」と鍋に入れて中火にかけ、ヘラで潰しながら加熱します。
【ポイント】
「鯵のヨーグルト漬け」だけをそぼろにするとしょっぱくなってしまうため、トマトで水分とまろやかさを加えます。加熱中に焦げそうになったら、さらに少し水(分量外)を足します。
2. 火が通ったら、ガラムマサラ、ココナッツフレークを入れます。味が足りなかったら塩(分量外)で整えます。
3.麺の具を用意します。タマネギは薄切り、生姜は千切り、パクチー、バジル、紫蘇はざく切り、トマトはさいの目切りにします。ピーナッツは粗めに砕き、レモンはくし切りにします。
4.麺は袋の表示に従って茹でて、冷水で洗い冷やし、しっかり水気を切ります。植物油と塩で和えます。
【ポイント】
汁のない和え麺の場合、麺と具が絡みにくいのが難点。麺に下味をつけておくことで、具がうまく絡んでいない部分でも美味しくいただけます。油をごま油やココナッツオイルにすると、また違った雰囲気が楽しめます。
5.皿に麺を盛り、「鯵のココナッツカレーそぼろ」、3、干しエビをのせて完成です。魚醤や酢、唐辛子で味を調整し、よく混ぜていただきます。
安田花織さんが選んだ器は…
花彫浅鉢 大(ジコン)
中心から縁に向かって大輪の花が開くように彫られた浅鉢。「絵入りの皿は料理との相性が難しいのですが、これは描いているのではなく彫られているから主張が強すぎず、使いやすいです。そのうえ渕錆がアクセントになって、全体が締まった印象。深過ぎないから、汁物にも和え麺のような汁のないものにも使えます」