cotogotoスタッフの愛用品じまん
スタッフが日々愛用している道具への愛を、
独断と偏見を交えながらご紹介!

2019年12月公開
カメさんの愛用品
こんにちは、cotogotoのカメです。
私が紹介するのは、輪島キリモトの「端反椀(はぞりわん) 本朱」です。
購入したのは3年以上前でしょうか。
きっかけは、連載「工房訪問」の取材で
輪島キリモトへ訪れたことでした。
(詳しくはぜひ記事をご覧ください!)

▲輪島キリモトの工房の様子。
それまで漆の器は身近なものではなく、正直よくわかっていなかったのですが、
工房で話を伺ったり、つくっているところを見せてもらったことで、
漆の特性にびっくりしたんです。
水分を取り込んで固まる、世界で唯一保湿し続ける素材であり、
それゆえご飯粒の離れがいいとか、
抗菌作用もあって、酸・アルカリにも耐性があり強靭だとか……。
漆は高級料亭やハレの日など特別な場や日のための道具だと思っていたけれど、
実は普段の暮らしで毎日使うのに最良の道具なのではないかと思ったんです。
「漆器のある暮らし」に興味が湧いて、まずは使ってみようと購入しました。
「端反椀」は18,000円(税抜)。
漆器は値段で躊躇してしまう人も多いと思います。
私も工房に伺うまでは高いと思っていました。
でも実際に漆器ができるまでの工程を見せていただいたら、
薄手に見えて実は9層にもなっていて、
一つの漆器ができるまでに驚くほど時間と手間がかかっていることを知り、
「漆器って全然高くない」とすとんと納得できたんです。
とくにお椀は毎日使うものだから、すでに元を取っている気がします。
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好きなところ その1
手触り、口当たりがとにかく心地いいcotogotoでは当時、輪島キリモトのお椀は
「小福椀」、「ヘラ模様椀」、「端反椀」の三つを扱っていましたが、
私が「端反椀」を選んだのは、その手触りとかたちに惚れ込んだから。
「端反椀」は、輪島塗の伝統的技法である「本堅地仕上げ」で塗られています。
しっとりと吸いつくような肌触りが気持ちよくて。
とにかく触っていて心地がいいから、なでなですることで癒されています。
▲「端反椀」はその名の通り、端がゆるやかに反っているのが特徴です。
そして、漆は口当たりのよさも最高。
「端反椀」は、唇に沿うように端が滑らかにカーブしているから、
口につけたときのフィット感も素晴らしいんです。
1日の中の例え5分、10分だとしても、「端反椀」で食事をすることで、
「あぁ、いいな」と満ち足りた気持ちになります。
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好きなところ その2
汎用性のある、ちょうどいい大きさ▲「端反椀」ならたっぷりのスープだって、しっかり受け止めてくれます。
「端反椀」の使用頻度はほぼ毎日。
味噌汁はもちろん、スープも「端反椀」でいただくことが多いです。
一般的なお椀に比べるとちょっと大きめの「端反椀」ですが、
私はその大きさも気に入っています。
具だくさんの味噌汁にはちょうどいい大きさだし、
蕎麦やうどん、にゅうめんなどをちょっと食べたいときや、
小どんぶりにもぴったりなんです。
普通の味噌汁のときはついつい「端反椀」の大きさに合わせて
たっぷり飲んでしまうのですが、
大きすぎて困ったことは一度もありません。
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好きなところ その3
生活に楽しみが生まれ、ハリが出る▲使い終わった漆の器は、水道水に含まれるカルキ分が残らないように水気を拭き取っています。
「端反椀」は食卓で使っているときだけでなく、
洗ったり拭いたりしているときも心地よく、
後片づけまでの一部始終が楽しみなんです。
「端反椀」の高台まで流れるような曲線を眺めては、
「つくづくいいかたちだなぁ」とうっとりしながら拭き上げています。
漆を使う中で気をつけているのは、よそう料理の温度。
100℃近い温度のものを注ぐと白く変色してしまうので、
味噌汁もできてすぐではなく、他の用意ができてからとか、
口にできる温度になるのを待ってよそいます。
他にも使い終わったらなるべく早く洗ってよく拭くこと、
水分を入れたまま放置しないことなど、
漆を使う上で最低限の約束事はあります。
でも、それだけ気をつければ、漆のお手入れは意外と簡単。
漆は気を遣わなければいけないからと敬遠する人もいますが、
私にとっては適度な緊張感になって生活にハリが出る気がします。
ブランド品を持つと、ちゃんとしようという
意識が生まれるなんて人もいますが、
それと同じように「端反椀」を使うことで背筋が伸びて、
きちんと暮らそうという気持ちになれるんです。
最近体調を崩した時期があり、それ以来常々思うのですが、
ちゃんとしたご飯をちゃんと食べているという実感が、
健康に繋がっていると思うんです。
たとえ味噌汁とご飯だけの食卓でも、漆のお椀があれば、
なんだか健やかで清々しい気持ちになります。
最初はシックな深い朱色だった「端反椀 本朱」。
漆は使えば使うほど透明感が増して色が明るくなるので、
3年使って徐々に色が明るくなり、艶も出てきました。
使うことで美しく育ち、
死ぬまでずっと使い続けられるほどの丈夫さを持ち合わせた漆。
これからも毎日の暮らしに小さな楽しみをもたらしてくれそうです。