2018年4月公開
シャキシャキした歯ごたえに、ほっくりした香りと甘み。
ほのかに感じる苦みもおつな春の味覚・筍。
「実家の裏手でとれるので、大きな釜でまとめてゆでて
この時期は毎日筍づくしでした」と言うのは、フードユニット「TORi(トリ)」の岡本雅恵さん。
「私もその筍とりに参加してました」とは、相方の鷲巣麻紀子さん。
そんな筍には格別な思い出のあるTORiのお2人に、
煮物やステーキ、炊き込みご飯とは一味違う、筍の新たな味わい方を教わりました。
きゅっとした甘酸っぱさとピリッとした玉ねぎの香りが
筍の旨味を引き立てる「筍と新玉ねぎのピクルス」です。
さらに、フライとの相性抜群の「筍と新玉ねぎのタルタルソース」と
旬の野菜アスパラガスを加えた「春野菜と豚肉の炒め物」もご紹介します。
溜まったものを排出し巡りをよくする筍
筍は竹の地下茎から伸びた若芽のこと。
竹にはいろいろな種類がありますが、
一般的に食用として出回っているのは孟宗竹がほとんど。
土から頭を出したと思うと、あっという間に大きくなるので、
アクが少なく身がやわらかい食べ頃はほんのいっときです。
エグミを和らげるため、アク抜きが必要。
時間が経つにつれアクが強くなるので、
掘り出したらなるべく早くアク抜きをしましょう。
塩分を排出する役割があるカリウムや、
整腸作用のある食物繊維が豊富なため、
体の巡りをよくしたい春にぴったりの食材です。
教えていただいたのは…
フードユニット TORi
世界のお母さんの味と古くから伝わる保存食をテーマに物語のある料理を届ける岡本雅恵さん(写真右)と鷲巣(わしず)麻紀子さん(写真左)によるフードユニット。大学の同級生だった2人がユニットを結成したのは、卒業を間近に控えた2005年。2010年には中目黒に「cafe&catering TORi」をオープン。お互いの妊娠・出産を機に5年続けたお店はクローズし、現在は雑誌やウェブサイトへのレシピ提供やワークショップ、イベント出店などで活動中。オフィシャルサイトは、こちらから。
材料(つくりやすい分量/
完成量正味約320g)
- 筍…小1本(正味約120g)
- 新玉ねぎ…1個(正味約200g)
- 米ぬか…10g
- 唐辛子…1/2本 ※アク抜きをまとめてやる場合、3本程度までは同じ分量で、それ以上になったら、本数に合わせてぬかや唐辛子を増やしてください。アク抜き後、皮を剥いた状態で水に浸けて冷蔵すれば、1週間程度は保存が可能。水は毎日取り換えます。
- 酢…200ml
- 水…250ml
- きび砂糖…65g
- 黒胡椒(ホール)…10粒
- 唐辛子…1/2本
- 昆布…3cm角
- 塩…ひとつまみ
(ピクルス液)
1.筍のアク抜きをします。よく洗い、底の土が付いている部分を切り落とします。早く火が通るよう、穂先の3〜4cmを斜めに切り落とし、切り口から縦方向に10cm程度、径の半分くらいの深さまで切り込みを入れます。
2.外の皮を2〜3枚剥がします。
3.鍋に2とぬか、唐辛子1/2本、筍がしっかりとかぶるくらいたっぷりの水を入れ、強火にかけます。(※写真は浮いていますが、沈ませるとたけのこにかぶるくらい水が入っています)
4.沸騰したら火を弱め、吹きこぼれない程度にお湯が踊る状態で、やわらかくなるまで煮ます。煮る時間は筍のサイズによって異なりますが、今回のサイズでは、30分を目安に。縦に入れた切れ目から竹串を刺し、すっと入るまでやわらかくなったら火を止めます。そのまま4時間〜一晩置いて冷まします。
【ポイント】
煮汁のまま冷ますことで、よりアクが抜けやすくなります。
5.筍を煮ている間に、ピクルス液を用意します。鍋にピクルス液の材料をすべて入れ中火にかけ、砂糖が溶けたら火を止めます。
6.4の皮を剥きます。縦に入れた切れ目を両側に押し開けるようにして、剥けるところまで剥きます。
7.穂先の黒い部分を切り落とします。
8.側面の茶色い部分や赤いボツボツした部分を取り除きます。
9.縦に4等分し、さらにそれぞれ斜めに5〜8mmの薄さに切ります。
10.新玉ねぎは縦半分に切り、さらに8等分程度の幅で繊維に沿ってくし切りにします。
11.保存容器に9と10を入れ、5のピクルス液を注ぎます。食材全体がしっかり液に浸るよう、表面にラップを密着させた状態で蓋をして冷蔵庫へ。食べごろは翌日から。冷蔵で2週間保存可能です。
TORiが選んだ器は…
皮鯨輪花角皿 (九谷青窯・高原真由美)
ギャザーのように波打つ花弁模様と、「皮鯨(かわくじら)」と呼ばれる鉄釉の縁取りが特徴的な角皿。「柄物だと色味がシンプルな筍と新玉ねぎが負けてしまうので、白色だけれどかたちが華やかなこの器を選びました。皮鯨が入ることで、全体の印象も引き締まります。真ん中にちょこんと盛り付けても様になるかたちとサイズですね」
「筍と新玉ねぎのピクルス」を刻んでゆで卵とマヨネーズに混ぜれば、
フライに添えるタルタルソースの出来上がり。
甘みも酸味もピクルスについているので、味付けは塩で調えるだけ。
玉ねぎの香りもアクセントになり、さっぱりとした味わいだから、
揚げ物がいくらでもいただけます。
今回は、小海老のフライに添えました。
コリコリとした筍の食感も楽しく、
食べ応えのあるソースはサンドイッチなどにもご活用ください。
材料(2人分)
- 「筍と新玉ねぎのピクルス」…35g
- マヨネーズ…50g
- ゆで卵…1個
- 塩…適量 ※ピクルスの量は、お好みで調整してください。
- 小海老…8尾
(頭と殻をとった正味約100g) - 酒…大さじ1
- 塩…ひとつまみ
- 小麦粉、卵、パン粉…適量
(小海老のフライ)
つくり方
1. タルタルソースをつくります。「筍と新玉ねぎのピクルス」とゆで卵の白身を5㎜ほどの大きさにカットし、ボールにマヨネーズ、黄身と一緒に入れます。フォークで黄身を潰しながら混ぜ、塩で味を調整します。
2. 小海老は酒と塩でもみ、5分置いたら水で洗って、キッチンペーパーなどで水気をしっかり切拭き取ります。
3. 2に小麦粉、卵、パン粉の順で衣を付けて、180度の油でこんがりと色づくまで揚げます。皿に盛り、タルタルソースを添えます。
TORiが選んだ器は…
小鉢 3寸 うす飴(瑞々)
すとんと直線的なデザインとあたたかみのある飴色の小鉢。「うす飴色にタルタルソースの色が映えますね。浅めのかたちはすくいやすく、取り分けて使う場合など便利。一緒に合わせた大柄なやちむん『皿(陶眞窯)』にも馴染むし、和洋問わず他の器と合わせやすい器ですね」
「筍と新玉ねぎのピクルス」に
同じく春が旬のアスパラを加え、豚バラ肉と炒め物に。
ピクルスの甘みと酸味が利いた酢豚風の味わいは、ごはんとの相性抜群。
筍と玉ねぎは切る手間も省けるので、
いつもの炒め物より手軽にできるのも保存食のいいところです。
材料(2人分)
- 「筍と新玉ねぎのピクルス」…120g
(筍70g、新玉ねぎ50g) - 豚バラスライス肉…150g
- アスパラガス…3本(固い皮を剥いて正味約50g)
- 生姜(みじん切り)…少々
- 酒…大さじ1
- 薄口しょう油…小さじ1
- 「筍と新玉ねぎのピクルス」の液…小さじ1
- 太白ごま油…大さじ1
- 塩、黒胡椒…各少々
つくり方
1. アスパラガスは、皮の固い部分を剥き、固めに塩ゆで(塩は分量外)したら4等分にします。豚バラスライス肉は食べやすい大きさに切ります。
2. フライパンに太白ごま油を入れて中火で熱し、生姜のみじん切りを加えて香りが出てくるまで炒めます。
3.豚バラスライス肉を2に加え、色が変わって火が通るまで炒めたら、軽く塩を振ります。
4.筍と新玉ねぎを入れ、酒、薄口しょう油、ピクルス液を加えて、やや強めの中火で汁気を絡めるように炒めます。
5.アスパラガスを4に加えてさらに炒め、黒胡椒を引きます。