はじめての手前味噌 | 暮らしの読みもの | cotogoto コトゴト

はじめての手前味噌

2021年3月公開

「手前味噌ですが……」とは、
恐縮しつつも自慢したいときに使う言葉。
味噌は昔、どこの家庭でも自家製でそれぞれ家の味があり、
その出来栄えを自慢しあっていたことに由来します。

日本の食卓に欠かせない調味料の一つ「味噌」。
市販の味噌を購入するのもいいですが、
おうち時間が増えた今だからこそ、手づくり味噌に挑戦してみませんか。
必要な材料は大豆と米麹、塩だけ。
つくった後は涼しい場所に置いて発酵・熟成するのを待つのみ。
同じレシピでつくっていても、気温、室温など家庭の環境で
味が変わってくるところも味噌づくりの醍醐味です。
今回は基本の味噌のつくり方を、
発酵のスペシャリストである料理研究家・舘野真知子さんに教わりました。

出来上がるまで時間はかかりますが、
手間をかけてつくった味噌はきっと格別に美味しいもの。
我が家だけの味をお楽しみください。

  • 用意する道具

    • 保存容器

      (左)持ち手付ストッカー
      角型L(野田琺瑯)

      (右)スクエア L(野田琺瑯)

      味噌の容器は、ガラス質の釉薬が施されている琺瑯など、酸に強く、清潔に保てるものがおすすめです。味噌は空気に触れると風味が損なわれ、変色しやすくなります。縦に高さがある容器は、味噌が空気に触れる面積が少なくなり、劣化を防ぎます。「野田琺瑯」の「持ち手付ストッカー 角型L」は持ち手がついているので取り出しやすく、「スクエア L」は持ち手がない分、コンパクトに収納できます。どちらの容器も今回のレシピの1kgの味噌を保存するのにちょうどいいサイズです。

    • 無水鍋 KING
      (ハルムスイ)


      大豆は水を吸うと2~3倍ほど大きくなるので、大豆を茹でる鍋は大きめのサイズを用意しましょう。「ハルムスイ」の「無水鍋 KING」は、熱伝導率に優れたアルミ合金でできているため、火が通りやすいのが特徴。1kgの味噌をつくる場合、サイズは「20cm」、「24cm」がおすすめです。

      【その他のおすすめ商品】
      鍋 (中尾アルミ製作所)
      両手鍋 (柳宗理)

    • 圧力鍋

      ピース圧力鍋
      (鋳物屋)


      大豆を茹でる時間を短縮したい人は圧力鍋がおすすめ。普通の鍋なら約4時間茹でなければいけないところ、「鋳物屋」の「ピース圧力鍋」なら約10分程度の加圧で済ますことができます。時短になって便利ですが、茹ですぎには注意が必要です。茹ですぎると大豆に水分が入り、酸味が強い味噌になってしまいます。1kgの味噌をつくる場合、サイズは1番大きい「6.0L」があると安心です。

    • あくとり

      パンチングあくとり
      (家事問屋)


      大豆を茹でていると灰汁が出てきます。「家事問屋」の「パンチングあくとり」なら、灰汁がすくいやすいように、持ち手の角度が計算されていて、すーっと灰汁の下に皿面が入ります。お手入れも簡単で、水を張った小皿にさっと通したり、水で洗い流すだけで、簡単に灰汁が落ちていきます。

      【その他のおすすめ商品】
      卓上アクトリ (工房アイザワ)
      あくとりスプーン (オークス)

    • すり鉢・すりこ木

      すり鉢・すりこぎ
      (東屋)


      大豆はしっかりつぶし、滑らかな状態にする必要があります。大変な作業なのでフードプロセッサーを使うのがおすすめですが、多少粒感が残ってしまうことがあるので、仕上げ用にすり鉢・すりこ木があるとより便利です。「東屋」の「すり鉢・すりこぎ」は、すり鉢の縁の内側に溝があり、食材がこぼれにくくなっています。サイズ展開が豊富なのもうれしいところです。

      【その他のおすすめ商品】
      すり鉢・すりこぎ (松野屋)

    • 消毒

      パストリーゼ77
      (ドーバー)


      雑菌の繁殖を抑えるために、容器の消毒をします。「ドーバー」の「パストリーゼ77」は、度数77度のアルコールに抗菌力のある緑茶から抽出した高純度のカテキンを配合。スプレータイプで手軽に使えて除菌効果も抜群です。お家にあるアルコールスプレーなどを使用する場合は、食用に適しているかどうか必ずご確認ください。焼酎やウォッカなど、無味無臭で度数35度以上のアルコールでも代用できます。

  • 味噌仕込み

    <材料>

      (塩分約12%/完成量:1㎏分)

    • 大豆…200g
      ※茹で大豆なら460g。工程4から参照
    • 米麹…400g
    • 塩…110g
    • 水…600ml

    • (カビ防止のわさび玉)
    • わさび粉…大さじ1
    • 水…小さじ2
    • ※カビ防止はわさび玉以外にも、酒粕を薄くのばしたり、焼酎を吹きかけるという方法で代用できます

    <つくり方>


    • 大豆の分量の約3倍の水(600ml)で
      18~24時間しっかりと大豆を戻します。

    • Point
      写真左のように大豆に皺がよっていると、
      戻しが不十分な証拠。
      戻しが甘いと茹であがりが固く、
      美味しい味噌ができないので、
      写真右のように
      ふっくらとした状態になるまで
      戻すようにしましょう。


    • 通常の鍋なら約4時間大豆を茹でます。
      さし水をしながら、
      吹きこぼれないように注意し、
      灰汁を取り除きましょう。
      ときどき混ぜて底の大豆が焦げないように
      してください。
      圧力鍋の場合は蒸気があがり、
      加圧が始まってから10分。
      その後圧が下がるまで蒸らします。
      蓋を開けられる状態になるまで
      30分程度かかります。
      この後の工程でゆで汁が必要になるので
      とっておきましょう。

    • Point
      茹であがりの目安は
      指で大豆をつぶしてみて、
      抵抗ないやわらかさになっているかどうか。
      大豆がかたいままだと
      美味しい味噌にならないので、
      しっかり茹でます。


    • ボウルに米麹と塩を加え、
      しっかりとなじませるように混ぜます。


    • 大豆をつぶします。
      フードプロセッサーを使うのがおすすめです。
      すり鉢やビニールに入れて
      ビンなどを転がしてつぶすこともできますが
      時間がかかります。
      このとき、大豆が冷めてしまうと粘りが出て
      つぶしにくくなるので、
      あたたかいうちにつぶしましょう。

      茹で大豆を使う場合は、
      電子レンジで600W1分程度
      あたためてからつぶしましょう。
      ぬるかった場合は30秒ずつ
      様子を見ながらあたためます。
      あたためすぎても冷ませば問題ありません。

    • Point
      大豆は写真のように粒がなく、
      滑らかな状態になるまで
      つぶすのがポイントです。


    • つぶした大豆に3を加えて
      まんべんなく混ぜ合わせます。
      均等に混ぜないと
      カビの原因になるので注意してください。


    • 味噌玉をつくります。
      5を空気を抜くように力を込めながら、
      ゴルフボールからテニスボールくらいの
      大きさに丸めていきます。
      味噌は空気に触れることで
      カビが生えやすくなってしまいます。
      容器に詰める前から味噌玉に成形し て空気を抜くことでカビが生えにくくなります。

    • Point
      はじめに、つくった味噌玉を割ってみて、
      粘度を確認します。
      割ったとき、写真のように
      ポロポロと崩れてしまうと粘度が不十分。
      少しずつ大豆の茹で汁を加えながら
      粘度を調整していきます。
      味噌玉をつくって割ってみて、
      崩れなければ粘度が十分な証拠です。


    • 味噌玉を容器に詰めるため、
      保存容器にアルコールをふりかけ、
      清潔なクッキングペーパーでふき取ります。
      煮沸消毒、もしくは熱湯に浸けて
      消毒しても問題ありません。


    • 6の味噌玉を空気を抜くように
      押し込んで詰めていき、
      表面を平らにします。


    • ラップを表面全体に密着するように敷き、
      わさび粉を水で溶いて丸めた
      わさび玉を置いて蓋をします。
      わさび玉はカビ予防の効果があります。

    • Point
      味噌にカビが生えないようにする手段は
      わさび玉の他にも方法があります。
      一つは、味噌の表面に
      焼酎を少量吹きかけて消毒する方法。
      次に菌の繁殖を予防するのに優れている
      酒粕を板状に薄くのばし、
      味噌の表面にかぶせる方法。
      どちらも空気に触れないよう、最後に表面にラップを密着させるように敷きます。

    • 10
      直射日光が当たらない
      涼しい場所に置いて保存します。
      玄関など、雑菌が多い場所は避けましょう。
      ※気温30℃以上の場合は野菜室で保存します。
      味噌の熟成には20℃程度が適しており、
      温度が低すぎる場合は発酵が進まず、
      高すぎる場合は過発酵になってしまいます。
      そのため、気温30℃を目安に
      以下なら室内の涼しい場所に、
      以上なら野菜室での保存が好ましいです。

    • 11
      6か月発酵させて色が濃くなり、
      味噌の香りがしてきたら食べられます。
      味見をしてみて、
      好みの味になっていたら完成です。
      味に深みを出したい場合は、
      もう2~4ヵ月ほど置くのがおすすめです。
      完成したら、冷蔵庫で保存をしましょう。
      低温に置くと発酵が緩やかになり、
      味の変化が少なくなります。

  • 味噌を仕込む時期について

      味噌は「寒仕込み」という、
      寒く、雑菌が繁殖しにくい1月~2月に仕込むのが一般的。
      「夏など暑い時期に仕込むことはできないの?」と思いますが、
      雑菌や味噌の保存場所に注意していれば一年中仕込むことができます。
      仕込む時期の気温によっても、完成する味噌の味わいが少しずつ変わってくるので、
      季節でつくり分けてみて、味比べをしてみるのも楽しそうです。
      「15℃以下」、「16~29℃」、「30~35℃」といった3つの区分が気温の目安となります。
      味噌をつくる際の参考にしてみてください。

    • ~15℃以下

      最も味噌を仕込みやすい気温。
      気温が低いと雑菌が繁殖しにくいため、カビが生えにくく、
      低温でゆっくり時間をかけて発酵することで味噌の旨味を引き出せるので
      味噌仕込みにおいて最適の時期です。
      長期間の発酵熟成を行うため、
      容器はアルコールや熱湯などでしっかり消毒しましょう。
      保存場所は直射日光が当たらず、
      温度変化の少ない場所がおすすめです。

      食べごろ

      冬から夏、秋を通過し、初冬に完成します。
      夏の高温で発酵を活発にし、その後秋に向かい気温が下がり、
      発酵が落ち着き、熟成して食べごろになります。
      最低でも6ヵ月、さらに4~5ヵ月ほど置くと味が落ち着き、
      より深みのある味わいになります。

    • 16~27℃

      寒仕込みと比べて気温が高いため、発酵が早く進むのが特徴。
      発酵が活発になる温度は20~30℃で、
      寒い時期につくったものと比べると、比較的あっさりとした味わいになります。
      温度が高い分、空気に触れている部分にカビが発生しやすいので注意が必要です。
      わさび玉や焼酎、アルコールを吹きかけるなど、しっかり対策をしましょう。

      食べごろ

      3~5月あたりにつくったら、最低6ヵ月は置きます。
      深い味わいにしたい場合は、寒い時期で熟成させるため10ヵ月ほど置きましょう。

    • 28~35℃

      暑い時期に仕込む場合は温度・湿度が高いため、カビが発生しやすいので要注意。
      過発酵になり、味が落ちてしまう可能性もあるので、味噌を仕込んだ後には野菜室に入れます。
      気温が25℃ほどに下がったら、室内の涼しい場所に置き、
      発酵を進めるようにしましょう。
      味噌の色が濃くなりやすく、発酵の進みが早いことから、
      旨味や味わいが淡く、酸味が強く出る傾向にあります。

      食べごろ

      発酵期間中、野菜室で仕込んだ場合は最低でも6ヵ月置く必要があります。
      始めは野菜室、その後25℃以下になって野菜室から出して保管した場合も
      様子を見ながら、6ヵ月置くようにしましょう。
      10ヵ月程度置くと、味に深みが出るようになります。

  • 手前味噌Q&A


    • Q.

      カビが出てしまったらどうすればいいの?


      A.

      黒や緑、ピンクのカビを見つけたら、
      2、3mmほど削って取り除き、
      そこに焼酎などをふりましょう。
      白いものは酸膜酵母でカビではないので、
      そのまま発酵まで置いていて問題ありません。
      ただし完成したときには取り除いてください。
      食べても問題ありませんが、
      味が落ちるといわれています。

    • Q.

      わさび玉がカビてしまいました!


      A.

      つくり直し、取り替えてください。
      大さじ1のわさび粉を、小さじ2の水で溶いて
      丸めて味噌の上にまた置きます。

    • Q.

      味噌が膨張し“ふかふか”しているようですが、どうすればいいですか?


      A.

      「温度が高い」、「塩分濃度が低かった」、「酵母が入り発酵が進んだ」など、
      様々な原因が考えられますが
      混ぜたり、押すなどして
      発生したガスを抜いてあげれば戻ります。
      発行が落ち着くとガスが抑えられ、
      ふかふかしなくなっていきます。
      表面に少し塩を振って
      表面の塩分濃度を上げれば、
      過発酵を抑えることができ、
      味噌の管理がしやすくなります。
      膨張の頻度や度合いが大きい場合、
      この方法を試してみてください。

    • Q.

      たまり(汁)が浮いてきた場合はどうすればいいですか


      A.

      たまりは味噌の旨味成分が濃縮された
      エキスなので問題ありません。
      今回のレシピではほぼ出てこないはずです。
      浮いてきてしまっても特に問題はありませんが、
      気になる場合はすくって醤油代わりに使えるのでお試しください。

    • Q.

      天地返しは必要ありますか?


      A.

      2kg以上つくる場合は天地返しをしたほうが発酵が均一になりやすいです。
      今回のように少ない量の場合は天地返しをする必要はありません。
      味噌の量が多いと容積が増えるため、
      空気が必要な菌と、必要ではない菌のバランスが上下で崩れやすくなります。
      上下をひっくり返すように混ぜると均一になり、味がよくなるといわれています。

    • Q.

      アルコールや接着剤のようなにおいが気になります


      A.

      アルコールのにおいは酵母の影響です。
      発酵が進めば気にならなくなりますが、味は少し落ちてしまいます。
      接着剤のようなにおいがしてしまった場合には、
      なかなか味が戻らないといわれますので
      残念ですが破棄したほうがいいかもしれません。

    • Q.

      つくった味噌はどれくらい持ちますか?


      A.

      発酵がきちんとできていれば
      冷蔵庫での長期間保存が可能です。
      1、2年目の味噌が食べやすく、
      それ以降は発酵とともに風味が変わり、
      色が濃くなって酸味が強くなります。
      麹の旨味や甘みというよりは、
      酸味や独特の濃厚な風味が
      出てくるようになります。

手前味噌アレンジレシピ

「万能味噌だれ」のつくり方

定番の味噌汁でいただくのもいいですが、
食卓で万能に使える味噌だれのつくり方を教えていただきました。

<材料>

(つくりやすい分量)

  • 味噌…100g
  • 甘酒…50ml
    ※なければ砂糖小さじ2
  • 大葉…5枚
  • おろし生姜…小さじ1
  • 白すりごま…大さじ1
<つくり方>
  • 1.大葉をみじん切りにします。
  • 2.ボウルに味噌、甘酒、おろし生姜、白すりごま、1の大葉を加えて混ぜたら完成です。

<おすすめの使い方>
  • 冷奴やごはんにのせたり、焼きおにぎりに。
    野菜炒めや肉に絡めて焼いたり、鮭のホイル焼きにも。
    味噌汁に入れれば、大葉の爽やかな香りもあり、あっさりといただけます。
監修/料理研究家 舘野真知子さん

栃木で8代続く専業農家に生まれ、管理栄養士として病院に勤務後、2001年アイルランドの料理学校に留学。生産者が身近な環境の中、素材を生かす料理を学んで帰国。メディアのフードコーディネーターやレストラン「六本木農園」の初代シェフを務めた後、現在はフリーランスの料理家として発酵料理をキーワードに活動中。料理の楽しさや食べることの大切さを栄養、料理、文化を通して伝えています。「料理用あま酒、はじめました。」(ジェイブックス)や「きちんとおいしく作れる漬物」(成美堂出版)など著書多数。オフィシャルサイトは、こちらから。