ぬか漬け入門 | 暮らしの読みもの | cotogoto コトゴト
配送休業のお知らせ / 再入荷お知らせ誤送信について
シェアする:
シェアする:

ぬか床からつくる、ぬか漬け入門

2020年5月公開

米ぬかに水と塩を混ぜて発酵させたぬか床に、
野菜などを漬けてつくる「ぬか漬け」。
ぬか床に漬けることで酸味とうま味が加わり、
さらに食材の栄養素も増す、といいことづくめの漬物です。
発酵というと難しそうなイメージがありますが、
今回は、少量で失敗しにくいぬか漬けのはじめ方を、
発酵のエキスパートである料理研究家・舘野真知子さんに教わりました。

ぬか床に入れるものによって、でき上がるぬか漬けの味わいもさまざま。
また、野菜だけでなく、肉や魚などを漬けても美味しくいただけます。
いろいろと楽しみながら、ぜひご家庭の味をつくってください。

  • 材料のこと

    • ◎ぬか

      精米したときに出る生ぬかと、それを煎ったいりぬか、どちらでもぬか床に使えます。 生ぬかは、家に精米機がない場合、お米屋さんでも購入できます。米由来の乳酸菌が生きているので、発酵が進みやすく、フレッシュな味わいに。ただし、含まれる油分が酸化しやすいので日持ちがしません。常温で2~3日、冷蔵で1週間、冷凍で1ヵ月を目安に使うようにしてください。 一方いりぬかは、煎ってあるので日持ちし、スーパーなどで購入できます。ぬかの乳酸菌は死滅していますが、雑菌も少なく、失敗しにくいのがメリット。いりぬかならではの香ばしさもあります。

    • ◎塩

      発酵をうまく進ませるためには、塩に含まれるミネラルも必要。塩化ナトリウムしか含まれていない精製塩ではなく、マグネシウムやカリウムも含む粗塩を使いましょう。

    • ◎うま味成分

      ぬか床の基本的な材料は米ぬかと水と塩ですが、昆布や干ししいたけ、煮干しなどうま味成分となる食材を加えると、さらに美味しさが増します。ポイントは、違ううま味成分をかけ合わせること。入れる食材によって、味が変わってくるので、いろいろと試してぜひ家庭の味をつくっていってください。生姜や山椒、にんにく、大豆などもおすすめです。

      ◎唐辛子

      殺菌作用のある唐辛子。雑菌の繁殖を抑えてくれます。

  • 道具のすすめ

    • ◎容器

      ぬか漬け美人
      (野田琺瑯)

      ぬか床用の容器は、ガラスやガラス質の釉薬が施されている琺瑯など、酸に強いものがおすすめ。かき混ぜやすいよう、ぬか床の量に対して余裕のあるサイズを。「野田琺瑯」の「ぬか漬け美人」は、長方形の箱形で冷蔵庫にもすっきり収まります。ぬか床の水分調整用に便利な「水取り器」つき。

      【その他のおすすめ商品】
      レクタングル深型(野田琺瑯)

    • ◎ヘラ

      シリコンゴムヘラ
      (CakeLand)

      米ぬかと水を混ぜるとき、粉が飛び散りやすいので、手よりもヘラがあると便利。ほどよくしなる「CakeLand」の「シリコンゴムヘラ」は、一体成形で継ぎ目がないから、粉ものに最適です。少量のぬか床にはヘッドが細い「小」を。小回りが利いて使いやすいのです。

      【その他のおすすめ商品】
      シリコンスパチュラ(家事問屋) ゴムヘラ(工房アイザワ)

    • ◎消毒

      パストリーゼ77
      (ドーバー)

      雑菌の繁殖を抑えるために、最初に容器の消毒をします。「ドーバー」の「パストリーゼ77」は、度数77度のアルコールに抗菌力のある緑茶から抽出した高純度のカテキンを配合。スプレータイプで手軽に使えて除菌効果もぴかいちです。焼酎やウォッカなど、無味無臭で度数35度以上のアルコールでも代用できます。

  • ぬか床づくり

    <材料>

      (つくりやすい分量/完成量:1㎏分)

    • ぬか…800g
    • 水…1L
    • 塩…110g(ぬかの13~14%)
    • 赤唐辛子…2本
    • 昆布…5cm角1枚
    • 煮干し…4本
    • 干ししいたけ…2枚
    • 生姜(薄切り)…2枚
    • 捨て漬け用の端野菜…適量

    • ※端野菜は、キャベツの外側の葉、にんじんや大根の端や皮など、なんでも大丈夫です。

    <つくり方>


    • 鍋に水を入れて沸かし、塩を入れて溶けたら冷まします。アルコール消毒した容器に、ぬかと冷めた塩水を半量ずつ入れてヘラでよく混ぜます。ぬかには油分が含まれているので水をはじきやすく、2回に分けるとやりやすくなります。ある程度混ざったら、手でさらによく混ぜます。


    • うま味の元となる昆布、頭と内臓をちぎった煮干し、ざっと割った干ししいたけ、生姜を混ぜます。唐辛子は、辛くならないよう種を取り除いてから混ぜます。


    • 野菜についた乳酸菌をぬか床に加えて発酵を促すための「捨て漬け」をします。端野菜を150~200gほど2に埋めます。


    • 空気を抜くように表面を平らにならします。雑菌が繁殖しないよう、容器の縁についたぬかをきれいにぬぐいます。


    • 容器に蓋をして、2~3日冷暗所に置きます。室温が30度を超えるときは、冷蔵庫の野菜室に入れてください。その間、1日1回(常温の場合、夏場は2回)上下をひっくり返します。1日に何度も混ぜてしまうと乳酸菌が増えにくいので、混ぜすぎに注意します。


    • 2~3日経ったら端野菜を入れ替えます。端野菜を取り出す際、野菜を絞って汁が出るようなら、乳酸菌を含んだ汁なので、絞ってぬか床へ加えます。新たな端野菜150~200gを加え、1日1回上下を返しながら、4~5日冷暗所に置きます。室温が30度を超えるときは、冷蔵庫の野菜室に入れてください。水分が多すぎると雑菌が増えやすくなるので、キッチンペーパーでぬか床の表面を押さえて水分を調整します。


    • 6の端野菜の入れ替えを2~3回繰り返すと発酵が進みます。ぬか床から酸味のある複雑な香りがしてきて、触ってふかふかするようになったら完成です。

  • ぬか漬けの楽しみ方

    ぬか床が完成したら、いよいよ食材を漬けて、ぬか漬けを楽しみましょう。
    野菜はもちろん、肉や魚、チーズ、果物など、いろいろな食材を試してみてください。
    食材によってはぬか床に直接漬けず、別漬けした方がいいものもあるので、
    詳しくは下の表を参考にしてください。
    漬ける時間の目安は常温で1~2日、冷蔵で2~3日ですが、食材や切り方などでも変わってきます。
    基本的に漬かりやすいのは、水分が多いものやかたちが薄いもの。
    食べてみて、好きな漬かり具合を見つけてください。

    • 基本は野菜

      ぬか漬けと言えば、やっぱり野菜。定番の大根やきゅうりの他、パプリカやきのこもおすすめです。生で食べられる野菜は、基本的にそのまま漬けることができますが、野菜によっては一手間必要なものも。下の表を参考にしてください。

    • うずらの卵もうま味アップ

      茹でたうずらの卵も、ぬか漬けにするとぬか床のうま味を吸って豊かな味わいに。ピクルスよりも酸味がやわらかく、水っぽくなりません。漬ける時間はうずらよりかかりますが、鶏のゆで卵もぬか漬けになります。

    • お肉もさっぱり食べられる

      鶏肉でも豚肉でも牛肉でも、ぬか漬けにすることでうま味が増し、脂が分解されるのでさっぱりいただけます。ほどよく脱水され、食感もほどよく締まります。
      衛生的にぬか床には直接漬け込まず、肉の周りに塗ってラップでくるんで漬けます。加熱してからいただきます。

    • ぬか床に埋め込んで漬けるもの

      ぬか床に直接埋め込んで漬けられるもの。
      食材によっては一手間加える必要があります。

      • 大根、にんじん…皮を剥いて縦2~4等分にしてぬか床へ。
      • みょうが…丸のままか、縦半分にしてそのままぬか床へ。
      • きのこ類…石づきを取り、電子レンジで少ししんなりするくらい加熱(100gを600Wで2分が目安)してからぬか床へ。
      • ミニトマト…ヘタを取ってそのままぬか床へ。
      • きゅうり…両端を切って塩をまぶしたままぬか床へ。発色よく漬かりやすくなります。
      • なす…縦半分に切り、鉄と一緒に漬けると発色がよくなります。
      • ごぼう、さつまいも…軽く茹でてからぬか床へ。
      • 枝豆…茹でて鞘から出し、お茶パックに入れてからぬか床へ。
      • こんにゃく…下茹でし、棒状にしてからぬか床へ。
    • 別漬けするもの

      生肉・生魚など衛生面が気になるものや、
      色やにおいがぬか床に移ってしまうもの、
      やわらかくてぬか床に混ざってしまうものは、
      ぬか床を一部取り分けて別漬けを。
      食材にぬか床を塗り、ラップでくるむと手軽です。

      • 肉、魚、チーズ、アボカド、たまねぎ、赤大根など
        ※ぬか漬けにした生肉や生魚は、必ず加熱調理してからお召し上がりください。
  • ぬか床について

    • ◎ぬか床に漬けると栄養素がアップ

      ぬか床に漬けることで、ビタミンB群やミネラルなど、ぬかに含まれる栄養素が食材に移ります。また、水と塩を混ぜた米ぬかが発酵してできたぬか床には、乳酸菌、酪酸菌、酵母、その他細菌の4つの菌が生きて作用しています。乳酸菌は腸内環境を整えることで知られていますが、酪酸菌はさらに胃酸でも死滅せず、生きて腸に届く菌。でき上ったぬか漬けを食べることで、腸内環境が整い、食中毒防止や免疫アップにもつながるのです。

    • ◎定期的に混ぜることが肝心

      ぬか床は酵母、乳酸菌、酪酸菌が絶妙なバランスで共存しています。乳酸菌はまろやかな酸味とうま味を生み、酵母は香り、酪酸菌は乳酸菌の増殖を助ける働きがあります。それぞれの菌は酸素を好む度合いが違うため、放っておくとぬか床の中で偏りが生まれてしまいます。そのため、毎日混ぜて菌の配置換えをすることが、ぬか漬けの風味を均一に保つために大切です。ただし、混ぜすぎると配置が戻ってしまうので、天地を返すような要領で混ぜてください。また、毎日混ぜるのが難しい場合は冷蔵庫へ。ぬか床の菌たちは、20~30度で活動が活発になります。それより温度が下がると活動がゆるやかになるので、冷蔵庫で保管する場合は、1週間に1度混ぜるだけでいいのです。

    • ◎ぬか床づくりは春と秋がはじめどき

      菌が働くことでできるぬか床。乳酸発酵が進み、酸性に傾くことで他の雑菌が増えるのを抑えています。ただし気温が高すぎると、十分な乳酸発酵の前に雑菌が増えてしまうことに。そのため、菌が活動できる温度は保ちつつ、気温が上がり過ぎていない春や秋が、ぬか床づくりにおすすめの季節なのです。

  • ぬか漬けQ&A


    • Q.

      常温に置いておく場合、暖房をつけたり消したりする部屋はやめた方がいい?


      A.

      常温の場合も、温度が一定にキープできる場所の方が発酵が安定します。心配な場合は、冷蔵庫の野菜室などがおすすめです。

    • Q.

      ぬか床が水っぽくなってしまった


      A.

      水分が多いと、雑菌が増えてしまいます。表面にキッチンペーパーを当てて水分を吸い取ったり、ぬか床の表面の真ん中をへこませて水分を溜めて取り除きます。それでも水分が多いと感じたら、カップ一杯のぬかに塩小さじ1強(ぬかに対して7%の塩)を混ぜてぬか床に加え、よく混ぜてください。ぬかだけでなく塩も足すのは、ぬか床の塩分濃度を変えないためです。

    • Q.

      酸っぱくなってしまった


      A.

      発酵が進み過ぎると酸味が強くなります。茹で卵1個分の殻の薄皮を除き、細かく手で砕いたものを加えると、カルシウムが酸を中和してくれます。生卵の殻は、サルモネラ菌の不安があるので、茹で卵の殻を使ってください。もしくは、粉辛子を大さじ1~2加えると発酵が抑えられます。

    • Q.

      ぬか床が少なくなった


      A.

      「たしぬか」をします。ぬかと水の割合が4対5になるようにしたものに、ぬかの14%の塩を混ぜてぬか床へ足します。たしぬかをした後は、捨て漬けは不要。たしぬかとして、好きな味のぬか床もらってきて足すと、そのぬか床の味になります。

    • Q.

      表面に白いカビのようなものが生えた


      A.

      ぬか床に働く酵母菌です。気になるなら取り除いてもいいですが、そのまま混ぜても大丈夫です。赤、青、黒いものはカビですので、その下1cmくらいぬかごと取り除き、たしぬかをしてください。

    • Q.

      表面が黒ずんできた


      A.

      ぬか床が酸化することで表面が黒ずんでくることがあります。ぬか床に含まれる脂質やミネラル成分が空気中の酸素と結びついて黒くなっているだけなので、混ぜ込んで問題ありません。気になる場合は、ぬか床を冷蔵庫など温度の低いところに置くか、たしぬかをすることで軽減できます。

    • Q.

      接着剤のようなにおいがする


      A.

      かき混ぜるのが足りないとアルコール発酵酵母が発生して接着剤のようなにおいがすることがあります。一度冷凍するとにおいを抑えることができる場合もありますが、においが残る場合は、残念ながら捨てて、新しいぬか床をつくってください。

    • Q.

      旅行などで長期使わないときの保存方法は?


      A.

      2~3日なら冷蔵庫で大丈夫です。数ヵ月使わないときは、冷凍します。解凍すれば再び使うことができます。

おまけ

「ぬかふりかけ」のつくり方

ぬか床づくりやたしぬかで用意したぬかが余ったら、「ぬかふりかけ」に。
白米にふりかければ、玄米を食べるのと同じことに。
玄米が苦手な人でも美味しく栄養をいただけます。

材料

(つくりやすい分量)

  • ぬか…大さじ3
  • かつお節…1パック(4g)
  • 黒ごま…大さじ1
  • 青のり…大さじ1
  • しょうゆ…大さじ1
  • みりん…大さじ1
  • きび砂糖…小さじ1
つくり方
  • 1.ぬかをフライパンで、香ばしい香りがするまで2~3分弱火で煎ります。
    ぬかには油分が含まれるので、油はしきません。
  • 2.1にその他の材料を加え、ぱらっとするまで弱火で炒めます。
監修/料理研究家 舘野真知子さん

栃木で8代続く専業農家に生まれ、管理栄養士として病院に勤務後、2001年アイルランドの料理学校に留学。生産者が身近な環境の中、素材を生かす料理を学んで帰国。メディアのフードコーディネーターやレストラン「六本木農園」の初代シェフを務めた後、フリーランスの料理家に。料理の楽しさや食べることの大切さを栄養、料理、文化を通して伝え、発酵料理をキーワードに活動。「料理用あま酒、はじめました。」(ジェイブックス)や「きちんとおいしく作れる漬物」(成美堂出版)など著書多数。オフィシャルサイトは、こちらから。

シェアする: