RHYTHMOSの工房を訪ねて

2. 命を繋ぐ、革の仕事

「革」は元をたどれば命ある動物たち

RHYTHMOSのコンセプトは、命。
「『RHYTHMOS(リュトモス)』って、
英語の『RHYTHM(リズム)』の語源となった古代ギリシャ語なんです。
僕はこの言葉を音楽のリズムではなく、
命の鼓動という意味で捉えてブランド名に使いはじめました。
また『RHYTHMOS』には、ものの姿やかたちという意味もあります。

動物に分けてもらった素材でものをつくり、
さらに使う人の味が出て新しい魂が吹き込まれていく。
そんな風にかたちを変えながら命がつながり、
その鼓動を感じるものをつくりたいという願いを込めています」。

牛革

▲飯伏さんが持ち上げているのが、牛の頭側。左上が背中側、右下が腹側です。

そう話しながら飯伏さんが見せてくれたのは、大きな1枚の牛の革。
作業台からはみ出るくらいの大きさで、横幅はなんと2メートル以上あるそうです。
「これは、牛を背中から半分に切った状態です。
上が背中で下が腹。右が頭で、左が尾の方」。
そう言われて見てみると、立っている牛の姿と重なります。
革が牛の皮膚であるという事実に、改めてはっとします。

牛


牛の模型と見比べてみると、
お腹には血管が走り、首や背のあたりにはシワがよっています。
同じように本物の牛にも、そして牛から生まれた革にも、
「トラ」と呼ばれるシワによる縞模様や、
「イナズマ」と呼ばれる血管や血筋の跡があります。
「よく動く首のあたりはシワが多く、骨が当たるところは硬い。
虫刺されの跡もあれば、ケンカや転んでできた傷もある。
生きていた動物なんだから、全部当たり前のことなんです。
人間と同じですよね」。

血筋

▲内側に使われるパーツの裏面を見てみると、葉脈のような血筋の跡が。
人間の手や足の甲のように、皮膚のすぐ下を血管が通っていたときにできる模様です。

「ほとんどのメーカーではきれいなところだけを選んで使うことが多いと思います。
でもRHYTHMOSのコンセプトは、命。
動物の命無しにレザーアイテムはつくれないわけですから、
命に感謝して、強度に問題がない限り、
できるだけすべての革を余すことなく使うよう心がけています」。

それでも、財布などには使用できないような
傷やシワの目立つ部分、製作時に発生する端切れなどを
活用するために、RHYTHMOSにはセカンドライン
「LEFTOVER(レフトオーバー)」シリーズがあります。
このシリーズの商品では傷やシワのある部分も
積極的に使っています。
例えば、「コースター」。
シンプルなデザインが、革の表情を引き立てます。

傷やシワをマイナスにとらえるのではなく、
世界に1つの個性と捉える。
そして、その跡から生きていた頃の牛の姿に想いを馳せてみると、
今まで以上に愛おしく感じられるのではないでしょうか。


コースター

▲「残りもの」を意味する「LEFTOVER」シリーズより「コースター」。

命への感謝を針に込めて

サドルステッチ


命への感謝の気持ちは、その製法にも現れています。
その1つが、革の縫い方。
RHYTHMOSではすべてのレザーアイテムを
「サドルステッチ」という伝統的な手縫いの手法で仕上げています。
つまり、ミシンは一切使っていないのです。

サドルステッチ


サドルステッチは糸の両端に針を付け、
交互に針を通して縫う方法。
ミシン縫いの場合は、上糸が下糸をすくって縫う仕組みのため、
糸が両側に貫通せず、1ヵ所がほつれるとすべてがほどけやすいという欠点があります。
一方、サドルステッチは両面から波縫いしたようなかたちになり、
糸が貫通し、とても丈夫で、ミシンのような欠点がありません。
1ヵ所がほつれてもほどけにくく、修理も可能です。

もちろん縫製にかかる時間は、ミシンの何倍にもなります。
ミシンなら数秒でできる作業も、手縫いだと10分以上かかることも。
それでも手縫いを選ぶのは、ミシンで縫うよりも丈夫で、
なにより革のコンディションを直接指で感じることができるから。
丁寧な手仕事で丈夫なものをつくることで、
お客さんにも永く大事に使ってもらいたい。
そんな想いを込めながら、一針一針縫っているのです。

サドルステッチ


丁寧で美しい縫い目は、とても手縫いには見えません。
でも、飯伏さんはそれでいいと言います。
「縫い方だけでなく僕たちのものづくりはすべて手仕事ですが、
手の跡はできるだけ残さないように意識しています。
手仕事であるという余計なフィルターをかけずに、平等な目線で選んで欲しいんです。
実際に使ってもらえれば、使い心地のよさやつくりの差は
絶対に感じてもらえると信じているので」。

永く使い続けるために

Zipの修理

▲修理後の「Zip L」。
使い込んで革に加わった味わいはそのままに、糸の縫い直しやオイルメンテナンスを経て、ますます美しくなりました。

RHYTHMOSでは、商品の修理も受けています。
それも素材を大切に思う気持ちから。
「普通に使っていれば、革自体がダメになることはほとんどありませんが、
永年使えばどうしても糸が切れることや、ファスナーが壊れることはあります。
だからRHYTHMOSでは修理して永く使えることを前提にしたつくりを心がけています。
手で縫い、つくりがシンプルだからこそ、何度でも修理して使い続けられる。
そういう意味では、RHYTHMOSのレザーアイテムに寿命はないと考えています」。

Zipの修理

▲「Zip」の修理は基本的に5,000~8,000円(税抜)程度。
また、購入より3ヵ月以内は無償修理が保証されます。

修理の依頼がくることで、「なぜそうなったのか?」や「どう使っているのか?」を考え、
商品をよりよくするヒントも得られます。
修理から学び、定期的にファスナーの貼り方や
パーツのサイズなど細かいところの改良も行っているそう。

Zipの修理

▲ずっと自然に任せているだけではくたびれてくることもあるので、時にはメンテナンスも必要。
RHYTHMOSではメンテナンス方法の相談にものってもらえます。

レザーアイテムを永く使うためには、
日々のお手入れも気になるところ。
しかし意外にも財布の場合、特別なことは必要ないと言います。
「革にお手入れが必要というのは、革靴からきているイメージ。
靴は水に濡れたり、泥が付いたりするので定期的なお手入れが不可欠ですが、
財布はそういうことが少ないので、普通に使っている限り、お手入れはほとんど必要ないんです。
使うことで手の脂が付き、衣類などとの摩擦で自然とツヤも出ます」。

毎日使うことこそ、一番のお手入れ。
そう考え、共に過ごすなかで生まれる深い味わいは、
永く大切に使い続けることへのご褒美なのです。

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