3. お弁当箱選びのすすめ
かたちによって、詰め方のコツが異なるお弁当箱。
そもそも、何を基準に選べばいいのでしょうか。
一番大切なのは、自分にとっての優先順位をしっかり決めることだと中山さんは言います。
電子レンジにかけて、温かいご飯が食べたい人はプラスチック製であることを、
たくさん食べたい人は大容量であることを優先して。
お手入れが面倒な人には、無垢の木でてきている曲げわっぱは向いていないかもしれません。
自分の性格とも相談しながら、以下の選び方を参考に、ぴったりなお弁当箱を探しましょう。
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かたちの選び方
重要なのは深さ!
あとは使い方・暮らしにあうものをかたちを選ぶときに一番大事なのは、意外にもお弁当箱の深さ。
「深すぎるとおかずを詰める難易度が高く、
浅すぎるとフタが閉まらなかったり、中身が潰れてしまいます。
内側の深さ4cm程度が一番詰めやすいです」。
浅いものは、チャーハンなど一品だけや量を控えめにしたい時に、
深いものはご飯の上に焼き鮭をのせたり、
丼ものの時に重宝します。
深さ以外のかたちについては、鞄のマチに収まるか、
食べる量にあっているかなど、使い方や暮らしにあわせて
選んでみてください。 -
素材の選び方
美しく、調湿効果も期待できる
木・竹製天然の素材がもつ美しさが魅力。料理を引き立ててくれます。
さらに、無塗装や木の呼吸を妨げない水ガラス塗料を
使用したものは、木の調湿効果により、ご飯を美味しく保ちます。
一方で食べ物のにおいや色がつきやすい、
汁漏れしやすい、電子レンジが使えないというデメリットも。
また無塗装のお弁当箱は、
連日使用せず、使用後1日以上かけて
完全に乾かすのがおすすめ(柴田慶信商店)など、
気を付けなければいけない側面もあります。
>> 積層弁当箱 (公長齋小菅)
>> あすなろのBENTO-BAKO (輪島キリモト)
>> つくし弁当箱 (柴田慶信商店)
>> 小判弁当箱 (柴田慶信商店)
※柴田慶信商店の商品は、入荷が不定期かつ大変人気のため、長らく欠品しております。におい・色移りがない丈夫な
ステンレス・アルミ製レトロな見た目が人気のステンレス・アルミ製は、
においや色移りが少ないのが特徴。
パッキンや内フタ付きなら、汁漏れも防いでくれます。
シンプルなかたちが多いので洗いやすく、油落ちも良いので
清潔に保てるのも嬉しいところ。
丈夫で、お手入れも簡単なので、毎日気兼ねなく使えます。
電子レンジには入れられませんが、
幼稚園等にある保温器での温めは可能です。
>> アルミ弁当箱 (大一アルミニウム製作所)
>> 角型ランチボックス (工房アイザワ)
>> 角型ランチボックス スリム(工房アイザワ)
>> 小判型ランチボックス(工房アイザワ)
>> 丸型ランチボックス(工房アイザワ)
電子レンジOKの便利な
プラスチック製電子レンジで温められるものが多い、プラスチック製。
密閉できる、フタに保冷剤がついているなど、
機能性が高く、扱いも楽ちんです。
しかし、におい・色移りの可能性や、経年変化による変形、
子供にはフタが開けにくい場合があるという難点も。
>> GEL-COOL (三好製作所)
4.困ったときのお弁当Q&A
cotogotoスタッフに、普段お弁当をつくっていて困ったことを調査。
常備すべきおかずから、毎日楽しくお弁当をつくるためのコツまで、
中山さんに答えていただきました。
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Q. シリコンやプラスチックのカップなどを使わずに、味が混ざらない方法は?
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A. マッシュポテトを活用しましょう!
塩のみで味付けした状態でつくり置きしておくと、
和の味にも洋の味にも馴染むので、
味を混ぜたくないもの同士の間に入れれば、美味しく仕切れます。
また高さを出したいものの下に敷けば、底上げも可能。
クリームチーズと混ぜたり、コロッケにしたり、
茶巾にしたりと、アレンジの幅が広いので、
常備しておくと便利なおかず、No.1です。
どうしてもカップなどを使わなければいけない時は、
料理の邪魔をしない透明なプラスチックのものをおすすめします。
(合羽橋など、業務用調理道具のお店で販売されています)
でも、一番理想的なのは、味が混ざらないように工夫するのではなく、
味が混ざっても美味しい組み合わせを考えること。
その方が新しい発見があり、もっとお弁当を楽しむことができると思います。
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Q. 常備すべき食材やおかずはありますか?
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A. 前述のマッシュポテトと、隙間に詰められる細かいおかず、
茹でたり塩揉みした野菜です。
茹でたり塩揉みした野菜は、そのままはもちろんのこと、
他のおかずに合わせて味を変えたり、
形を変えて、隙間に詰めたり。柔軟に使えるので便利です。
また煮物やきんぴらごぼうは、時間が経つと味がなじむので、
前もってつくっておくことをおすすめします。
あとはスナップえんどうなど、かたちがかわいい野菜があると、
それだけで華やかになります。
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Q. 細かいおかずを上手に隙間に詰める方法を教えてください。
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A. 大きなおかずを詰めた後の隙間に、挿しこむように詰めていってください。
動きが出て、立体感のあるお弁当に仕上がります。
お弁当箱を開けたらおかずが移動していた!なんて現象も、
隙間おかずをしっかり詰めれば回避できます。
大切なのは、ぎゅうぎゅうにすることではなく、挿しこむという感覚です。
塩茹でしただけなど、味はあえてしっかりとつけない方が、どこにでも挿しこめるので便利。
他のおかずと混ざることで、味が付き、美味しく食べられますよ。
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Q. 茶色っぽいおかずばかりで、おばあちゃんのお弁当みたいです。
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A. 茶色っぽいお弁当は、あえて茶色を活かしましょう。
黒や深い緑を挿し色に、シックにまとめて。
カラフルなお弁当にはない、かっこいい仕上がりになりますよ。
またご飯を混ぜご飯にしたり、雑穀米などにするだけでも、洒落た印象になります。 -
Q. コツを参考にしながらつくったのですが、なんだか美味しそうに見えません……。
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A. 詰める時の目線を変えてみましょう。
食べる時に一番美味しく見えて欲しいから、
食べるときの目線で見ながら詰める、
つまり座って詰めると上手くいきます。
立った状態で真上から見て詰めるより、立体感が出ますよ。
特に詰めるのが不慣れな人は、是非まずは座ってみてください。
目線が今までと大きく変わります。 -
Q. おかずが傷まないコツを教えてください。
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A. 唐辛子や梅干しを入れたり、酢を使ったおかずを取り入れましょう。
また半熟は避け、食材の火入れをしっかりすることも鉄則です。 -
Q. 煮物やおひたしなど、水気をきったつもりでも、染み出てきてしまいます。
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A. かつおぶしやすりごま、とろろこんぶをまぶしてから詰めると
水気が出ても吸い取ってくれるので安心です。
また白和えは混ぜずに、
野菜の上に豆腐をあしらった状態で詰めると、
水分が出て味がぼやけることを防げます。
見た目もかわいらしいですよ。
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Q. お弁当の味付けのコツはありますか?
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A. 調味料ではなく、出汁をしっかりきかせることをおすすめします。
調味料を濃くしてしまうと、素材の味が消えてしまい、台無しです。
大人のお弁当の場合は、スパイスやハーブを取り入れることで、マンネリ化を防げます。 -
Q. おかずの品数が2〜3品しかつくれません。
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A. 茹で野菜や塩揉み野菜を取り入れましょう。
箸休めや隙間おかずとしても使える上
詰める前に簡単なアレンジを加えれば、短時間で立派なおかずにもなります。
「もう1品おかずを増やす」ではなく、「ちょっとした箸休めをつくる」という感覚なら、
もっと気楽に取り組むことができるはず。
マッシュポテトや細かいおかず(きんぴらごうぼうなど)も、
簡単につくれて、アレンジの幅も広く、柔軟に詰められるので便利です。
また品数が少なくても、おかずの大・中・小や食感の違いなど
しっかりとメリハリがついていれば、満足するお弁当に仕上がるはずです。
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Q. 毎日お弁当をつくり続けるためのコツや、
やる気が出る方法はありますか? -
A. とにかく無理をしないこと。
まずは得意なものを中心につくるようにしましょう。
その中で1つだけ新しいおかずにチャレンジしてみて。
1つだけなら少々上手くいかなくても、そんなに落ち込みません(笑)。
ちょっとずつ、つくれるものの幅を増やしていけば、毎日のお弁当づくりが楽しくなります。
また、栄養面についても、お弁当のバランスが悪くても、
朝ご飯・夜ご飯で補えばいいので、難しく考えなくても大丈夫。
お弁当のやる気を上げるためには、好きなものだけ入れるというのも手ですよ。
おわりに
終始笑顔で、お弁当をつくる姿が印象的だった中山さん。
「ひらめいちゃった!」と、おかず同士を混ぜ合わせたり、組み合わせを変えたり。
お弁当箱の小さな空間が、まるで自由なキャンバスのように彩られ、
中山さんがお弁当をつくるいう行為を、とても楽しんでいることが伝わってきました。
そんな姿を見ていたら、お弁当づくりってもっと柔軟に、気楽に考えていいんだ!ということを感じたのです。
同じおかずを1か所に詰めなくてもいいし、つくりおきに茹でただけの野菜があってもいい。
むしろその方がいいんだ!というのは、大きな発見で、とても心が軽くなりました。
実際にやってみると、自分のお弁当箱のサイズにあった切り方がわからなかったり、
気合が入りすぎてぎゅうぎゅうに詰めすぎてしまったり、
正直、中山さんのようにはうまくいかない部分もあるかもしれません。
しかし、そんな時間も含めて、お弁当をつくることが楽しいなと思えたら
これからの暮らしがちょっと変わる、そんな予感がするのです。
中山 智恵 (なかやま ちえ)
フードコーディネーター
幼少から音楽を学び、音楽と料理の共通点に魅かれて
いくつかの料理店で経験を重ねた後、料理の世界へ。
テレビや雑誌、広告など、各メディアで幅広く活躍中。
季節に寄り添い、満足感のある、また食べたくなるような料理を提案。
著書に『定食弁当』(主婦と生活社)
『「下ごしらえ」があればラクおかず』(マイナビ)がある。