Lueの工房を訪ねて | 工房訪問 | cotogoto コトゴト - ページ2
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2.「ティースプーン」ができるまで

真鍮の板や棒を切ったり叩いたり接合したり、
一つ一つ手作業をメインに進める製作工程を、
一番最初のアイテムである「ティースプーン」を例に見せていただきました。

▲工房の1階が作業場に。気持ちのいい風が抜ける明るい空間です。

  • ▲叩き台や金槌をはじめ、細かな道具がたくさん。

  • ▲製作上出る端材は、溶かして再度素材へと戻ります。

製作現場は、工房の1階部分。
アクセサリーづくりで真鍮に触れていた菊地さんでしたが、
カトラリーはまったくの独学。
「はじめは、最初から最後まですべて手作業でやっていました。
よくつまづいていたとは思いますけど、調べたり、手探りでやっていった感じかな」
今では、磨きに使う便利な機械も数種類揃え、それなりの工場という雰囲気です。

工程1:切り出し

  • ▲新潟県燕市の工場に依頼して、指定した太さにつくってもらっている真鍮のワイヤー。

  • ▲真鍮の板は大阪の工場からいろいろな厚さのものを仕入れています。

使うのは、柄の部分になる真鍮のワイヤーと、匙部分になる真鍮の板。
ワイヤーは、新潟の燕市にある工場で太さを指定してつくってもらっています。
板は、大阪の町工場から厚さ違いで仕入れます。
コーヒーサーバーは、サジ部分が深いから叩きやすいように薄い0.5mm、
フォーク類は薄すぎると曲がってしまうから1.2mmのように、
つくるものによって使い分けています。
微妙なミリ数の違いも、つくりながら掴んできました。

ちなみに、真鍮は銅と亜鉛の合金。
その配合のバランスによって、真鍮としての色やかたさ、粘りが違ってきます。
鉛が含まれると成形がしやすくなりますが、
食品衛生法上、錫または銀メッキが義務づけられてしまいます。
真鍮の経年変化を魅力とするLueでは、
鉛が一切入っていない真鍮を仕入れることでメッキの必要をなくし、
独特の光沢を生かしたアイテムをつくっています。

  • ▲真鍮の板に「罫書き(けがき)」という先の尖った工具で匙部分をかたどります。

  • ▲左がうっすらと跡がついた真鍮の板で、右が罫書き。

板を選んだら、金属の表面に線を描くための罫書きという道具を使って
匙部分の下書きをします。

▲持ち手の長さが30cm近くもある大きなハサミを使うと、てこの原理で金属も切れてしまいます。下書きに沿って切り出します。

ハサミで切り出します。
金属の板とは思えないくらい、まるで紙を切るようにするすると刃を進めますが、
これにもコツが必要。
刃が板に食い込むように押しながら切っていきます。
棒も柄の長さに切り分け、片方の先に匙部分を差し込むための切れ目を入れます。

工程2:バリを取る

▲切断部分のバリを研磨して取ります。真鍮の細かな粉が舞うので、マスクは必須。

研磨機の一つ、ベルトディスクサンダーで柄と匙部分の切断部分を削って滑らかにします。

工程3:匙部分の成形

▲小さな石臼のような叩き台で匙部分のカーブを成形します。まるでスパイスをつぶしているよう。

  • ▲たたき台は底が半円形に窪んでいて、つくるものに合わせてカーブの深さを変えて使用。

  • ▲叩き台のかたちに沿って匙部分の丸みができます。

いよいよ匙部分の丸みをつくります。
真鍮をバーナーで熱してやわらかくしたら、小さな石臼のような叩き台に入れて、
ぎゅうと押しつけるよう7~8回叩きます。
叩き台のカーブはいろいろあり、つくるもののかたちに応じて選びます。

工程4:柄と匙部分の接合

▲吹けば飛ぶような小ささの「銀ロウ」をピンセットで押さえながら、バーナーの火を当てます。

▲小さなチップ状のものが「銀ロウ」。わずか1mm四方ほどの大きさです。

柄の先の切れ目に匙部分を差し込み、
真鍮よりも融点の低い「銀ロウ」という金属を
接着剤として使い、接合します。
スプーンの表側と裏側両方の柄と匙の接合部分に、
銀ロウを1枚ずつのせてバーナーで溶かします。

工程5:柄の成形

▲柄を金槌で叩いて成形。ここで柄の表情にもなる槌目もつきます。

工程の中で一番難しいのが、柄の成形。
「柄の部分に一番表情が出やすいんです。
匙部分は型があるから叩くだけなんですけど、
柄のところは同じようで同じにはならない。
型がないので、柄は感覚でやる部分が大きいんです」
基本的に複数のスタッフで工程を分業していて、
どのスタッフもどの工程もできるようにしていますが、
この柄を叩いて成形する部分は、まだ菊地さんしかできないのだとか。

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    ▲叩くための台は、なんと丸太。これはお父様が使っていたものを譲り受けたのだとか。

  • ▲でき上った柄の部分。槌目もつき、1本1本表情が異なるところも味わいがあるのです。

工程6:接合部分の研磨

▲柄と匙の接合部分を研磨して整えます。

ペンサイズの研磨機で、
柄と匙部分の接合に使った銀ロウがはみ出た部分を磨きます。

工程7:砂磨き

▲砂が舞わないよう、箱状の機械に手だけ差し込み研磨します。

  • ▲磨く前の状態。部分的に赤錆のようなものが見えます。

  • ▲研磨後。全体に細かな砂がまぶされていますが、錆のようなものは取れました。

サンドブラストというエアガンで砂を飛ばしかける機械で
製作工程で酸化して赤みがかかった部分の錆取りをします。

工程8:酸につける

▲酸性の液体につけて元の光沢のある状態に戻します。

真鍮は空気に触れることで色が変化します。
商品にする際は、一度元の光沢のある状態に戻すため、
酸につけて表面の酸化した部分を溶かします。
「使用していて経年変化した場合も、
お酢をつけて磨いてもらうと光沢が戻りますよ」と
お手入れ方法も教えていただきました。

工程9:洗浄

  • ▲バレル研磨機の蓋を開けたところ。泡立っているのが見えます。工程8の後、洗剤と一緒にこの機械に入れ、一晩回転させて研磨します。

  • ▲回転することで研磨される仕かけは、バレル研磨機の中に入っているこの小石。石自体も削れて徐々に丸くなっていくとか。

バレル研磨機という、石が入っている機械に洗剤と一緒に入れます。
一晩ほど回転させたら、すすいで乾燥させます。
中に入っている石により、細かなバリまで磨かれます。
「昔はバレル研磨機の存在すら知らなかったので、全部1本1本手で磨いていました」。
バレル研磨機の威力は絶大。1〜2人分の手間が省けるようになりました。

工程10:包装

▲真空パックにする機械。

お客様の元に届くまでに酸化しないよう、
1本1本真空包装を施して完成。

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