南景製陶園を訪ねて | 工房訪問 | cotogoto コトゴト - ページ2
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2.急須ができるまで

急須の作業工程を見せてもらうため、さっそく工房へ。
工房内にはタオルを手に、汗を流しながら作業をする人たちの姿が。
南景製陶園にお邪魔したのは、夏のはじめ。
エアコンによる乾燥は陶土には大敵。
そのため窯の熱もあって工房内の室温は50℃近くに。

▲小型の扇風機を設置したり、しっかり水分補給をするなど熱中症予防に余念がありません。

南景製陶園では、現在約10名ほどの職人さんが働いています。
「どんな働き方だとしても、作業に加わってもらう以上
どうしても専門的な技術が必要になるので、
パートさんだとしても“職人”と呼んでいます」。
パーツの成形や接合など、一朝一夕でできる作業ではありません。
時間をかけて習得するからこそ敬意を払い、そう呼ぶのです。

とは言え、職人といっても一つの作業を専門的に行うのではなく、
全工程を把握し、さまざまな作業を行ってもらいます。
「すべての工程に関わることで、
改善点や商品をよりよくするためにどうするべきかを考えてもらうんです。
そうすることで、その人のスキルアップや商品のブラッシュアップに繋がるんです」。

▲工房のいたる所に移動式の棚に並べられた急須や茶器が。

急須づくりは出荷までに細かく分けると12工程、期間にして1ヵ月以上かかります。
土をブレンドするところから始まり、成形、削り、接合、焼き、擦り合わせなど
さまざまな工程を経て急須は完成します。

工程1:土練り

▲真空土練機で水分の調整・脱泡を終えた土は、飛び出た円柱部分から出てきます。

まず、最初に陶土屋から届いた粘土を
「真空土練機(しんくうどれんき)」という機械に入れて、
粘土の水分調整と脱泡を行います。
粘土の中に余分な水や空気が入ったままだと
後の工程で割れの原因になってしまったり、
強度が不十分になってしまいます。

「陶器づくりの良し悪しは“一土 二焼き 三細工”という
言葉がある通り、一番大切なのは土。
昔陶土屋をやっていたこともあって、
土に対する思い入れは強いんです」と
力強く語る荒木さん。
現在は人手が足りず、
陶土屋に頼んで粘土をつくってもらっていますが、
これまでのノウハウを生かしてつくった独自のレシピを渡し、
粘土をつくってもらっている徹底ぶり。
一般的には粘土の配合にまで口を出すことは珍しいのだそう。

南景製陶園で扱っている土は、
黒くすべにも使われている「黒練り」、「白練り」、
「白の半磁」、「朱泥」、
器専用の「耐熱の土」の全5種類。
同じ機械で行うと土が混ざってしまうので、
5台の真空土練機がフル稼働しているそう。

▲陶土屋から届いたばかりの粘土。

工程2:成形・削り

▲急須は五つのパーツから成り立ちます。これらを接合していくのです。

土が整ったら、急須のかたちを決める成形に移ります。
急須は、胴体、蓋、持ち手、注ぎ口、茶こしの
五つのパーツを成形し、それらを接合することで完成します。
茶こし以外は機械ろくろと石膏型(せっこうがた)を使って
「動力成形」という土が入った型を回転させて
かたちをつくる方法で成形していきます。

▲イイホシユミコさんとのコラボ急須「急須 kyu-su」の蓋の石膏型。型の中に陶土を入れて成形します。

▲機械ろくろの四角い箱の中に石膏型をセットします。型を回転させたらコテのついたハンドルを下ろし、急須の内側を成形していきます。

  • ▲急須の内側をつくるのはとても繊細な作業。刷毛などの道具を使って、慎重に成形していきます。

  • ▲急須の内側、注ぎ口、持ち手などパーツによってコテの形状が変わります。写真は注ぎ口を成形するために使うコテ。

石膏型は急須の種類、各パーツごとにいくつも用意されているので、
工房にはたくさんの型が並んでいます。
型の中に陶土を入れ、機械ろくろを回し、空洞になる急須の内部、
注ぎ口や持ち手の穴を専用のコテを使って成形していきます。

機械を使っているから、一見簡単そうに見えますが、それは間違い。
熟練の勘で型の癖や作業当日の気候を読んで、力加減を調整しなくてはいけません。
「ここで歪みなどがついてしまうと、後の工程でいくら修正しても
焼成後に最初の歪んだかたちに戻ってしまうんです。
デリケートな工程だからこそ、積み重ねた技術と職人の勘みたいなものが必要なんです」。

▲イイホシユミコさんの「急須 kyu-su」の蓋のくびれを回転ろくろをで削り出しているところ。機械で対応しきれない繊細な作業には職人の手が入ります。

成形を終えたパーツは、型から取り出し、
余分な箇所や機械では表現しきれない部分を職人が一つ一つ確認しながら削り、整えていきます。

工程3:茶こし製造(共茶こし)

▲茶こしの大きさは、急須のサイズに合わせてさまざま。急須に合わせて道具のサイズも変わります。

内部の茶こしをつくります。
ここで作業するのは共茶こし。

共茶こしは陶土を薄く伸ばし、棒に半球の型がついたお手製の道具で丸みをつけ、
多いものでは約400個の穴を一つ一つ丁寧にあけていきます。
穴をあけ終わると、胴体に穴をあけて共茶こしを納めます。
茶こしの位置が決まると、おのずと持ち手や注ぎ口をつける位置が決まるので、
全体のバランスを決めるこの工程はとっても重要なのだそう。

工程4:接合・生地仕上げ

▲成形した注ぎ口を専用の型にセットし、その型の傾斜通りに切り糸を入れます。まずは中心に切り糸を入れて、左右それぞれ切断していきます。

注ぎ口と持ち手を取りつけるために、
接する部分を胴体に合わせて切断します。
U字に曲げられた棒の両端に切り糸を張らせた
専用の道具を使って丁寧に、素早く切り取ります。
この作業も簡単そうに見えますが、瞬間的にやらないと
切断面が歪んでしまい、胴体とうまく接合できません。
緊張感のある作業です。

▲左は切断前の注ぎ口、右は切断後。角度がついたことで胴体と接合しやすくなります。

    ▲刷毛を使って「どべ」を塗っていきます。

  • ▲陶土を水で溶かしたどべは、液体状というよりは少しかたさが残ってねっとりとしています。

  • ▲集中力が必要な接合作業。このときに全体の歪みもチェックします。

注ぎ口と持ち手の接合には、接着剤として「どべ」と呼ばれるものを使います。
どべとは、急須をつくっている陶土と同じ成分の土を水で溶かした、
土もの同士を接着するために用いられるもの。
違う成分の土でつくったどべを使うと、
焼いた後に浮いてきてしまって、きれいに接着できないのだそう。

▲水を含ませたスポンジを使って一つ一つ丁寧に磨きます。

すべてのパーツが取りつけられ、1ヵ月ほど乾燥させたら
スポンジと水で生地の表面を滑らかに仕上げます。

工程5:素焼・検品・施釉・本焼成

▲窯は工房に全部で三つ。一度になるべくたくさん焼くのが理想です。とはいえ欲張って入れすぎて、窯の温度にムラをつくらないように注意が必要です。

▲急須に蓋をのせたまま焼成へ。

急須のかたちが仕上がったところで、素焼きへ。
約800℃で8時間ほど焼きます。
このときポイントになるのが、本体に蓋をのせて焼くということ。
焼成だけでなく、前工程の乾燥の際にも本体に蓋をのせたまま乾燥させるのだそう。

乾燥や焼成をすると、急須内部の水分が飛んで縮もうとし、急須のかたちが歪んでしまいます。
そこで本体よりも少し早く乾燥させた蓋をのせることで、
本体が縮もうとする力に反発し、縮みが最小限になって急須のかたちが保たれるのです。
「蓋と本体は一心同体。かたちができてから、乾燥、焼成と蓋と本体はずっと一緒なので、
他の急須の蓋をこちらに……なんてことはできないんです」と荒木さん。

素焼きを終えた急須は検品しつつ、エアーを使って表面の汚れを落とします。

▲急須を台にのせ、専用のガンから釉薬を噴射します。

無釉の黒くすべなどには必要ありませんが、
釉薬を施す急須には、このタイミングで釉薬をかけます。
専用のガンを使って釉薬を噴出し、
注ぎ口や茶こし部分など、穴をふさがないよう慎重に釉薬を施します。

そして本焼成は、素焼きよりも温度の高い約1200℃で8~10時間ほどかけてしっかり焼き上げます。

工程6:擦り合わせ・底網取りつけ

▲本焼成後の急須は、蓋と本体がぴったりくっついた状態に。

本焼成を終えた急須のつまみをひょいっとつまんだ荒木さん。
蓋だけが持ち上がるのかと思いきや、驚いたことに蓋と本体がぴったりくっついています。

これは焼成収縮によって、蓋と本体が縮み、かみ合わせが強くなることで起こるのだそう。
この工程では、本体から蓋を滑らかに取り外せるよう研磨をしていきます。

  • ▲蓋に砥石の粉をつけます。

  • ▲蓋を専用の機械にセットし、つまみを中心に回転します。本体を蓋に押しつけることで、接地面が研磨されていきます。

まず、本体を専用の棒で叩き、振動で共鳴させることで蓋は簡単に外せます。
ただ取り外しただけでは、滑らかな接地面にはならないので、
砥石を粉状にしたものを蓋につけ、蓋のつまみを専用の機械にセット。
スイッチを押すと蓋が高速で回転。
水で粉を落としながら本体を蓋に押さえつけることで擦り合わせていきます。
擦り合わせていると、最初はザザザーと粗い音がしていましたが、
だんだんと滑らかになったのか、音が聞こえなくなっていきました。

▲底網の急須に取りつける前のステンレス網。シート状になっています。

擦り合わせが終わると、共茶こしの急須は完成。
ベンリー急須はステンレスの底網を取りつけて完成です。

そして最終的に検品・梱包をして、お客様へ届けられます。

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