南景製陶園を訪ねて | 工房訪問 | cotogoto コトゴト - ページ3
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3.新たな挑戦

いつでも美味しいお茶を

南景製陶園の急須が多くの人に受け入れられてきたのは、
オリジナル商品への取り組みや定番品の見直しを行ったことだけではなく、
他にもさまざまな新しい挑戦があったからです。

▲南景製陶園の過去、現在、未来を伝える、という意味で名づけられた「時空 Ji-kwoo」は、南景製陶園の公式HPから取り寄せることができます。

2016年に新しい試みとしてつくったのは、「時空 Ji-kwoo」とタイトルがつけられた1冊の冊子。
「まずは、南景製陶園を知ってもらうところから。
少しでもうちやお茶について興味を持ってもらえるようにつくりました」。
商品の紹介はもちろん、工房内の写真や南景製陶園について、
イイホシユミコさんとタッグを組んでつくった「急須 kyu-su」の作成秘話、
日本茶アドバイザーの資格を持つ、荒木さんの奥様・礼さんによる美味しいお茶の淹れ方など
魅力的なコンテンツが詰まっています。
この冊子は南景製陶園を知ることができるだけでなく、
お茶への入り口の敷居を下げてくれるツールとして役立っているそう。

  • ▲870は南景製陶園の茶器やお茶を楽しめるような落ち着いた空間となっています。

  • ▲南景製陶園でつくられているさまざまな急須や茶器などが展示・販売されています。

2018年には工房の敷地内に「870(ハナレ)」という、商品の販売と
南景製陶園の急須を使って淹れたお茶を楽しめる場をつくりました。
もともとは荒木さんのおじい様、おばあ様が暮らしていた住居でしたが
住む人がいなくなり、維持費などの関係から取り壊しを検討していたところ、
そこに待ったをかけたのが、奥様の礼さん。

商品を並べ、ちゃぶ台を置くなど手を加えて一つ一つ丁寧に設えられた870は、
南景製陶園を訪れてくれた人の憩いの場に。
商品の製作背景などを知ることができたり、
礼さんが南景製陶園の急須を使って淹れたお茶をいただくことで
美味しさに気づき、感動する人も多いそう。
870は急須やお茶を実際に体験して、より深く知ってもらうための場所として活用されています。

▲海外向けに急須のスタイルで緑茶だけでなく、紅茶を楽しめるようにとつくられた急須や茶器。急須は通常より大きめにつくり、デザインもスタイリッシュに工夫されてます。

2019年には海外の展示会にも出店するように。
海外の人にも受け入れられるよう、
日本茶だけではなく、紅茶も淹れられる機能性とデザインを兼ね備えた急須づくりにも挑戦。
他にもSNSやウェブショップなど新しいことを次々取り入れていきます。

フットワークが軽く、現状にとらわれない柔軟な考えを持つ荒木さん。
そのルーツはどこから来るのだろうと尋ねてみました。

▲つくった急須、一つ一つの制作秘話を教えてくれる荒木さん。

「大学生までは自分が家業を継ぐなんて思っていなくて、他の親戚が継ぐと思っていたんです。
だから家業で急須をつくっていることは知っていたけど、経験は全くなくて……。
いざ、後を継ぐとなったときに少し焦ったのを覚えています」と
当時の出来事を笑いながら話してくれた荒木さん。
大学院に進む頃にはさまざまな事情により、
荒木さんが南景製陶園を引き継ぐことは決まっていましたが
一度は社会人を経験しようと就職活動に励みます。
結果、工業化学を専攻していたこと、
もともと車が好きだったこともあって、自動車会社の技術職に就職。
1年ほどサラリーマンを経験した後、
1990年には家業に入って修行を積むことになりました。
このとき荒木さんは25歳。

その後、2000年に5代目を継ぐまでの約10年間は長い悩みの時期だったそう。
「自分が商品をつくっていくうえで、疑問が次々と浮かんだ時期でした。
それまでは自分がほしいと思える急須をつくっていなくて、
自分がほしいと思えないものが売れるのか。
でも、それだったら自分がほしい急須ってなんだろう、て。
これから急須をつくっていくうえで、その疑問が一番大きかったかな」と、
“自分がほしい急須”を考えるところから荒木さんは動き出します。

急須づくりに関して初心者だった荒木さんは、技術を身に着け、知見を広げるために
当時四日市市にあった後継者育成事業という、
地域の伝統技術を継承していくための育成機関に5年ほど通います。
育成機関でさまざまな技術の指導を受け、いろんな産地を見て回ったりしたことで、
技術や見方、考え方が広がったのだそう。

「この経験のおかげで
黒くすべの構想ができあがりました。
家業だけでなくいろんな産地や窯元に触れることで
新たな発見もありました。
それに加えて多くの窯元が廃業になっていた時期でもあるので
生き残っていくためにどんどん挑戦していかなくちゃ、
という気持ちがあったんですよね。
そんな経験と時期的なものが、
色んなことにチャレンジするようになった
理由の一つかもしれないですね」。

そして育成機関の卒業後5年をかけ、
試行錯誤の末に黒くすべが完成。
発表と共に2000年に
荒木さんは5代目を正式に引き継ぎました。

▲870では、黒くすべが手に取りやすい中央に悠然と並べられています。

食卓のトータルコーディネート

▲急須、碗、茶托、皿はすべて南景製陶園のもの。どれもシンプルであたたかみのある雰囲気で、食卓には統一感が生まれます。 

急須だけでなく、碗や皿などの食器も手がけている南景製陶園。
その理由を尋ねると「お茶の時間がより快適に、素敵なものになるように
食卓のトータルコーディネートを目指しているんです。
お茶を飲むときには急須の他にも、湯呑みが必要。
そこにお菓子も添えるとなると、食器も欠かせません。
だから食卓がより彩られて、統一感が生まれるように
急須と同じ系統の食器をいくつかつくっているんです」と荒木さん。
南景製陶園の食器には、それぞれの急須に使っている
陶土やデザインを反映させることで統一感を出しているそう。

「今興味があるのは花ですね。食卓にも出せる小さい花器をつくりたいと思っています。
他にも嗅覚に訴えかけるお香関連のアイテムにも興味がありますね」と、
新しい商品づくりの構想は膨らむばかり。
そのうえ、日本茶以外のコーヒーや紅茶、酒類などの器にもチャレンジしてみたいと
これから先の展望を語る荒木さんは、とっても楽しそう。

南景製陶園は美味しいお茶を授けてくれるだけでなく、
心地のいいお茶の時間や食卓をコーディネートしてくれる窯元なのです。

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