2019年2月公開
収穫後すぐに出荷される色白の「新生姜」に対し、
収穫してから数ヵ月寝かせたものが「ひね生姜(根生姜)」。
夏から秋の新生姜の季節を経て、
その年収穫したひね生姜が出回りはじめるのが冬の寒い時期です。
生姜は加熱すると、血行を促し体をあたためる成分が生まれるため、
体が冷えやすいこの時季に美味しく上手に活用したい食材です。
そこで、普段は薬味として使うことの多い生姜を主役として使う「生姜の佃煮」を、
料理家・村山由紀子さんに教わりました。
ごはんにのせて食べるのはもちろん、いつものおかずに加えれば、
体はぽかぽか、ぴりっとした辛みや香りが美味しさをさらに引き立てます。
アレンジレシピは、生姜と青じその香りがアクセントになった「生姜としその卵焼き」と、
佃煮だけで味つけいらずの「生姜入りメンチカツ」をご紹介します。
加熱で体をあたためる作用が生まれる生姜
生姜の辛み成分は、加熱すると血行促進作用があり、
体をあたためる効果のある成分へと変化します。
また、爽やかな香りも特徴的で、香りの成分には消炎や
食欲促進、疲労回復などの効果も。
冷えて消化機能が低下する時季におすすめの食材です。
しっかりと身が締まり、瑞々しいものを選びましょう。
教えていただいたのは…
料理家 村山由紀子さん
2003年、東京・吉祥寺にてパンの移動販売「吉ぱん」をスタートし、2006年にはカフェ「Yuuca.」をオープン。四季折々の素材の持つ美味しさを引き出す料理が得意。現在は、食のアトリエ「食房ボッカ」を主宰し、雑誌やWEBサイトへのレシピ提供、ケータリング、出張料理、料理ワークショップなど、さまざまな食を生み出しています。著書は、「天板1枚で!毎日のオーブンおかず」(河出書房新社)、「ベジヌードル」(主婦と生活社)、「ただいまから3分で作れる!ビールのおつまみ」(枻出版社)など。オフィシャルサイトは、こちらから。
材料(つくりやすい分量/
完成量約250g)
- 生姜…300g(正味約230g)
- しょうゆ…50ml
- みりん…50ml
- きび砂糖…大さじ3強
- 山椒(乾燥/ホール)…小さじ1
- 水…200ml
(A)
1.生姜は皮を剥き、千切りにします。
【ポイント】
根生姜は繊維がかたいため、食べやすくするには切る方向に注意します。まず、繊維を断ち切るように輪切りにしてから千切りにします。輪切りにする際にスライサーなどを使っても。
2.鍋に湯を沸かし、1を入れて再び沸騰したら火を消し、ざるで水気を切ります。
【ポイント】
下茹ですることで生姜の辛みが少し抜け、味も含みやすくなります。
3.鍋に2と(A)を入れて火にかけ、沸騰したらクッキングペーパーなどで落し蓋をし、弱火で1時間ほど煮ます。途中煮汁がなくなりそうな場合は、水(分量外)を少し足しながら焦がさないように煮ていきます。
4.落し蓋を外し、煮汁が残っている場合は、ほとんどなくなるまで煮詰めます。煮沸消毒した保存瓶に移して完成、冷蔵庫で2週間ほど保存が可能です。
村山さんが選んだ器は…
藍九谷プチ印手 小さな女の子、
ご飯茶碗 松灰 (東屋)
九谷焼の器にフランスのアンティークの木版を使って絵柄をつけた小皿と、伊賀の土と釉薬を使った一つ一つの表情豊かな飯碗。「小皿はつるっとした質感にほどよい主張があって、食卓のアクセントになります。一見シンプルで普通の小皿ですが、料理を食べると絵が見えてきて、最後にくすっとなる、その遊び心が楽しいですね。お茶碗は、高台が高くていいかたち。佇まいに惚れました。持ったときの重みや存在感もいいんです」
佃煮にしても生姜の爽やかな香りが残っているので、
料理の香りづけとしても活用できます。
同じく香味野菜のしそと一緒に卵焼きに混ぜ込めば、
ちょっとよそいきの一品に仕上がります。
「生姜の佃煮」の甘辛い味も卵焼きにぴったり。
ときおりカリッとするのは、佃煮に入れた山椒です。
いろいろな香りが楽しめる卵焼きです。
材料(1~2人分)
- 生姜の佃煮…30g
- 卵…4個(220g)
- 青じその葉…5枚(3g)
- サラダ油…小さじ1
- 大根おろし…適量
(つけ合わせ)
つくり方
1. 青じその葉は千切りにします。
2. 卵をボウルに割りほぐし、「生姜の佃煮」、青じそを入れ混ぜ合わせます。
3. 卵焼き器にサラダ油をしき、弱めの中火で熱し、余計な油はキッチンペーパーなどに含ませます。
4. 卵液の1/4量を流し入れ、8割ほど火が通ったら、奥から手前に向かって巻きます。
5. 4を卵焼き器の奥に移動し、4の作業をあと3回繰り返します。
6. 焼き上がったらまな板の上に取り出し、粗熱がとれるまで休ませます。お好みの大きさに切って、器に盛り、大根おろしを添えます。
村山さんが選んだ器は…
オーバルプレート lily white L
(イイホシユミコ)
ほっそりとした楕円形と幅広のリムが特徴的なオーバルプレート。「卵焼きが丸みのあるフォルムなので、お皿も角々していないゆるやかな曲線のものを選びました。幅広のリムによって、高級感が出ますね。素朴な卵焼きを立派に見せてくれました」。
合挽き肉を使ったメンチカツは、こってりボリュームのあるおかず。
そこに「生姜の佃煮」を混ぜ込むことで、
爽やかな生姜の香りと佃煮ならではのやさしい甘味が加わって
いくらでも食べられてしまいます。
佃煮にしっかり味がついているので、他の調味料は不要。
味つけが簡単というのも、うれしいポイントです。
材料(2~3人分)
- 玉ねぎ…小1個(120g)
- サラダ油…大さじ1
- 合挽き肉…200g
- 溶き卵…1/2個分(25g)
- パン粉…10g
- 「生姜の佃煮」…60g
- 小麦粉…大さじ3~4
- 溶き卵…1/2個分(25g)
- 牛乳…小さじ2
- パン粉(乾燥、細目)…適量(約60g)
- 揚げ油…適量
- からし…適量
- 千切りキャベツ…適量
- 千切りラディッシュ…適量
(衣)
(つけ合わせ)
つくり方
1. 玉ねぎはみじん切りにします。フライパンにサラダ油を熱し、弱めの中火で、玉ねぎがしんなりするまで炒めます。粗熱を取った後、冷蔵庫でしっかり冷やします。
【ポイント】
玉ねぎがぬるいと肉と合わせたときに傷みやすくなったり、挽き肉の油が溶けて肉ダネがギトギトしてしまいます。
2. ボウルに1と合挽き肉、溶き卵、パン粉、「生姜の佃煮」を入れ、手で素早く練り混ぜます。
3. 2を12等分にし、直径4cm厚さ2cmほどの円盤状にまとめます。
4. 衣の材料のうち溶き卵と牛乳を混ぜ合わせて卵液をつくります。3のタネに小麦を薄くつけ、卵液にくぐらせ、パン粉をまぶします。
【ポイント】
卵液は、卵だけでなく牛乳を加えると、さらっとして肉ダネにまとわりやすくなります。牛乳がなければ水でも大丈夫です。
5. フライパンか揚げ鍋に揚げ油を入れ、170度に熱します。4を入れ、途中返しながら火が通るまで3分ほど揚げます。油を切ってから器に盛りつけ、つけ合わせを添えます。
村山さんが選んだ器は…
平皿 黒縁 6寸 (小鹿田焼)
鉋で表面を削ることで模様をつける「飛び鉋」の平皿。「持っているのは白色の磁器が多く、土物の小鹿田焼を使ってみたかったんです。あえて洋食を盛りつけてみましたが、あたたかみがあって、素朴な揚げ物が似合いますね。いろいろな料理が合いそうなので、日々使えそうです」。