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coguの工房を訪ねて

3. 一つの道具ができるまで


coguのカトラリー 商品画像
自宅近くに借りている工房。親方から譲り受けた道具や、少しずつ集めた機械が並びます
今回、見せてもらったのは「大きいスプーン」ができるまで。
中島さんは、なるべく木を無駄にせず、
狂い(木が割れる、反る、縮むこと)が発生しにくい工程で製作を行っています。

一般的には原木を加工してから、乾燥させ、狂ってしまったものを除けるという流れですが、
乾燥が足りずに、使い始めてから狂いが生じるリスクが高まるそう。
そこで中島さんは、完全に乾燥させた状態の木を購入し、加工する流れをとっています。

木材を選び、仕入れる

木を見ることが何よりも好き、という中島さん。
なるべく自ら材木所に足を運び、仕入れてきます。
求めているのは、幅が広くて、最低でも15年かけて乾燥された木。

そして、木の状態をじっくり観察して選びます。
「木は育った環境によって性質が異なるので、
一本一本癖があります。
どうやって刃物を入れて加工すればいいのか、見極める。
それが天然木を扱う職人して必要なことだと考えます」。

きちんと見極められないと、木の抵抗にあい、
刃物が駄目になることも。
木を目で見て、触って、嗅いで、時には舐めることまで。
五感を使って、どういう環境で育った木なのか想像し、
一番適した加工方法を選択します。

また、中島さんは木の個性をとても大事にしています。
普通ははじかれてしまう節なども味と捉えて、
あえて生かしているのです。

今回はオニグルミを加工していきます。

木材
工房の外に立てかけられている木材。
天井に届きそうな大きさです

まっすぐな板をつくる

昇降盤

ラフと呼ばれる切りっぱなしの状態の木材を採寸し、
必要なサイズにあわせて「昇降盤」という機械で切断します。

万能木工機

「万能木工機」に移動し、表面の凹凸を削り、真っ直ぐに。
角は直角に整えます。

厚みを揃える

機械に何度か通し、板全体の厚みを均等に揃えていきます。
「大きいスプーン」をつくるときの板の厚さは、20mm。
「本当は16mmでも十分なのですが、
20mmの方が理想とするスプーンのカーブが出せるため、
わざと厚めに残しています」。
そのぶん彫る量は増えますが、手間は惜しみません。

型どり・成形

型をとる

整えた板に型をあわせて、
ボールペンで線を描き、型をとっていきます。
「必ず木の目に対して、斜めに型をとります。
目にそってまっすぐだと、木が割れたり折れやすくなるので」。
少しでも長く使えるものをつくりたい、
そんな中島さんの想いがここでも垣間見えます。

おびのこ

次に、描いた線にあわせて、「おびのこ」で木を切り抜きます。
曲線が多いので、細かく何度も刃を入れる、地道な作業です。

ベルトサンダー

そして、やすりがけの機械「ベルトサンダー」で研磨し、成形。
平らの板に、スプーンのカーブをつくっていきます。
何度も往復して削っていくと、立体感が現れてきました。

成形完了

原型となるスプーンのかたちができあがりました。

手で彫る

機械の出番はここまで。
このあとは手作業で彫っていきます。
まずは2本のサイズの違う彫刻刀を駆使して、スプーンの丸の内側をくり抜きます。

くり抜き


彫刻刀の刃の形は、自分で使いやすいように改良したもの。
「道具は自分の体の一部になるように使え」という、親方からの教えだそう。
見ていると、まるで刃が手から生えているかのように自由に操られ、
木がとても柔らかいのではないかと錯覚してしまうほど。
するすると彫られていきます。

削り


大きなナイフに持ち替え、仕上げの削り。
スプーンの丸の外側と持ち手を整えていきます。
20分程かけて、一本一本丁寧に、求めるかたちをつくっていきます。

どのくらい削ればいいかは、すべて指先の感覚で判断。
中島さんは長年、高い精度が求められる什器などをつくり続けた結果、
なんと紙を触っただけで薄さ何mmかわかるそう。
時には、わざと厚みを変えたり、彫り方を変えたり。
ひとつひとつの木にあった加工方法で仕上げています。

仕上げ

けずり

彫り終わったら、
最後はサンドペーパーで表面をなめらかに整えます。
目の荒い320番をかけた後、細かい2000番で仕上げることで、
使っているうちに発生する木の毛羽立ちを抑えます。

ワックスがけ

そしてワックスで油を入れます。
coguの道具は蜜蝋ワックス仕上げ。
表面を保護し、耐久性を増します。
見た目も艶が出て、色がぐんと濃くなりました。


完成形

最後に余分な油をウェス(布)で拭き取ったら、出来上がり!
それぞれに個性のある彫りの跡が美しく、思わず見惚れてしまいます。

ほんの小さなスプーン1本が完成するまで、全部で1時間半あまり。
本来ならば機械で行える部分も、中島さんは敢えて手作業にこだわります。
「いつも親方から、『職人なら一手間加えろ!手間を惜しむな!』と教え込まれてきました。
そのせいか、なんでも機械に頼るのは気が進まないんです」。
ひとつひとつ手をかけて、大事に彫る姿からは、木への愛情がひしひしと伝わってくるのです。

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