管理栄養士・美才治真澄さんに教わる、二十四節気の食べごろレシピ 2020 白露
2020年9月公開
二十四節気は「白露(はくろ)」を迎えました。
連日続いていた猛暑が少し和らいでいるように感じたり、
急な雷雨が訪れたり、セミの声が聞こえなかったり……。
気づけば秋を感じる機会も少しずつ増えてきました。
残暑はまだまだ続きそうですが、
美味しい秋の味覚や落ち着いた色合いの器を新調するなど、
食卓で秋を先取りして楽しんでみてはいかがでしょうか。
白露の献立
ヒカド
(めかじきと野菜の
とろみ汁)
調理時間:25分
243kcal(1人分)
「ヒカド」とは江戸時代に長崎県に伝えられた南蛮料理のこと。
ポルトガル語の「picado(細かく刻む、調理する)」に
由来しています。
にんじんや大根、しいたけなどの野菜類と、
めかじきや真鯛、ハマチやマグロなどの魚を
細かく切り、煮込んで、
すりおろしたさつまいもを加えてとろみをつけたスープです。
今回は旬の「めかじき」と
「さつまいも」を存分に使っています。
とろみがあることで、体の芯まであたたまり、
塩気のあるスープがさつまいもの甘みを際立たせています。
出来立てもいいですが、
1日置いて味が食材に染み込んでからいただくのもおすすめです。
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材料:約2人分
めかじき…1切(100g)
酒…小さじ2
塩…小さじ1/4
にんじん…1/3本(50g)
スッキーニ…1/2本(75g)
さつまいも…中1本(150g)
油…小さじ1
出汁…400ml
薄口醤油…大さじ1
みりん…大さじ1
つくりかた
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1.
めかじきは1.5cm角程度に切り、酒、塩をまぶしておきます。にんじんは1cm角。ズッキーニ、2/3本分のさつまいも(皮つき)は1.5㎝角に切ります。さつまいもの残り1/3はそのままとっておきます。
【ポイント】
にんじんは火が通りにくいので小さめに切りましょう。その他の材料はにんじんと比べて火が通りやすいので、ひと回り大きく切ります。 -
2.
鍋に油を入れ、にんじん、さつまいもを炒めます。
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3.
全体に油が回ったら出汁を加え、やわらかくなるまで10分ほど煮ます。やわらかくなったら、ズッキーニ、めかじきを加えて薄口醤油、みりんで調味し、さらに5分ほど煮ましょう。
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4.
煮ている間に残りのさつまいもの皮をむき、おろし金ですりおろします。
【ポイント】
とろみをつけるためにさつまいもをすりおろしたものを入れます。片栗粉や小麦粉を使わないのは、「ヒカド」という料理の歴史的背景が深く関係しています。かつてポルトガルからきた宣教師や貿易商人たちは、とろみをつけるためにパンを使っていましたが、禁教令により手に入らなくなったため、長崎っ子がさつまいもで代替することを思いついたからだそうです。 -
5.
3に4を加えて混ぜ、とろみがついたら完成です。
栄養のまめ知識
*季節の変わり目はストレスを感じやすいことに加えて寒暖差に体がついていけず、自律神経の乱れによって便秘がちになることも。
「めかじき」には良質な「タンパク質」はもちろん、腸内で善玉菌を増やし、腸内環境を改善する働きのある「DHA」、「EPA」などの「n-3系(オメガ3系)脂肪酸」が豊富に含まれています。
*「さつまいも」には腸内環境を整え、便秘を改善する「食物繊維」が豊富に含まれます(中1本あたり、皮を食べなかった場合は3.3g、皮を食べた場合は4.2gの食物繊維が摂れます)。食物繊維が不足しがちな現代の食生活においては皮ごと摂るのがおすすめです。
さつまいもを切った際に、断面にじわっと出てくる白い液体は「ヤラピン」と言って便をやわらかくする効果があり、食物繊維とダブルの効果で便秘改善に働きます。
*「めかじき」は、一般には切り身で売られていることが多い魚です。身が淡いピンク色でハリのあるものが新鮮。切り口が崩れているものやトレーにドリップ(液体)が出ているものは避けましょう。
*「さつまいも」は持つとズシリと重く、皮の色が鮮やかでかたちがふっくらしているものを選びましょう。ヒゲ根が均一に直線状に並んでいるものが良品です。切り口が蜜で黒くなっているものは、完熟して甘味が増している証拠です。
料理に使った器や道具
樫椀 G型 (喜八工房)
ほっこりと身も心もあたたくしてくれる汁物には、木製の汁椀を合わせてよりあたたかみのある雰囲気に。「G型」は横に丸く張り出したかたちが特徴的で、豚汁や今回のヒカドのように具だくさんな汁物でもたっぷり入ります。
美才治 真澄(びさいじ ますみ)
管理栄養士 / フードコーディネーター
香川栄養専門学校(女子栄養大学短期大学部)卒業後、管理栄養士・荒牧麻子氏に師事。のちブラジル・バイーアへ料理留学。帰国後ヴィーガンカフェ “Cafe Eight”のフードディレクターとしてケータリング・商品開発の企画運営に携わる。 現在はフリーランスとして、企業、メディアに向けたメニュー提案及び調理&スタイリング、栄養相談、料理教室、オーダーメイドケータリングなどを中心に活動中。女子栄養大学生涯学習講師。
著書に「満たされスープ」(世界文化社)、「かわいい!カラフルお弁当」(女子栄養大学出版部)。監修を手がけたものに「ギャル曽根流 大食いHAPPYダイエット」「世田谷農家に教えてもらう本当においしい野菜の食べ方」(ともにマガジンハウス)ほか。「ELLE a table」「VOGUE」「anan」「Hanako」「Tarzan」など各誌でも活躍中。ちなみに「トルコトラベルブック」(東京地図出版)は、cotogoto店長・涌井との共著本。
HP:http://bisaijimasumi.com/