和食の調味料 醤油
旨味、塩味、甘味、酸味、苦味の5つの味の基本要素がバランスよく含まれている醤油。
そのルーツとなる「醤(ひしお・食べ物を塩漬けした発酵食品)」が中国から伝わり、日本で発展した発酵調味料です。
古くから和食に欠かせない代表的な調味料として大切にされてきました。
醤油は大きく5種類に分けられ、それぞれに特徴があるので、料理に分けて使い分けてみましょう。
原料、製法
原料
醤油の主な原料は、大豆、小麦、食塩。
そして発酵に欠かせないのが、麹菌、乳酸菌、酵母菌を代表とする微生物です。
これらの微生物の働きによって、大豆のたんぱく質が旨味成分であるアミノ酸を、小麦のでんぷんが甘みとコク、豊かな香りを生み出しています。
そして食塩が腐敗の原因になる菌の働きを抑え、有用な微生物だけをゆるやかに働かせる環境を整えています。
豆知識
醤油の原料となる大豆には、大豆をそのまま使った「丸大豆」と、大豆の油を抜き取って醤油醸造用につくった「脱脂加工大豆」の2種類があります。
丸大豆を使った醤油は、上品な甘みに重厚な風味、まろやかな香りが特徴。
一方の脱脂加工大豆を使った醤油は、醤油の旨味成分になるたんぱく質の比率が高いため、旨味が強く、シャープな風味とキレのある香りが特徴です。
製法
醤油の製法には、「本醸造」「混合醸造」「混合」の3種類があります。
日本の醤油の多くが本醸造でつくられていますが、地域によっては「アミノ酸液(※)」を加えてつくる混合醸造や混合が支持されています。
製造方式は、醤油のラベルに「名称」として表示されています。
(例)名称 こいくちしょうゆ(本醸造) など
※アミノ酸液:大豆など植物性たんぱく質を分解したもの。旨味成分の元であるアミノ酸を多く含んでいます。
本醸造
大豆と小麦を微生物の力によって、長期にわたり発酵、熟成させたもの。
伝統的な製法で、約8割の醤油がこの製造法でつくられています。
まず、大豆と小麦に種麹を加えて「麹」をつくります。
この麹に食塩水を加えた「もろみ」をつくり、攪拌しながら発酵、熟成。
その後、もろみを搾り、搾り出された「生揚げ(きあげ)醤油」を加熱、殺菌して完成します。
混合醸造
本醸造でつくられたもろみにアミノ酸液などを加えることで、短期間で熟成させたもの。
その後、もろみを搾り、搾り出された生揚げ醤油を加熱、殺菌して完成します。
アミノ酸特有の旨味やコクが強いので、九州など一部地域で好まれています。
混合
本醸造または混合醸造でつくられた生揚げ醤油に、アミノ酸液などを混ぜ合わせたもの。
その後、もろみを搾り、搾り出された生揚げ醤油を加熱、殺菌して完成します。
アミノ酸特有の旨味やコクが強いので、九州など一部地域で好まれています。
種類
醤油の種類は、JAS規格(日本農林規格)により、5種類に分類されています。
種類は、製造方式と合わせて、醤油のラベルに「名称」として表示されています。
(例)名称 こいくちしょうゆ(本醸造) など
濃口醤油(こいくちしょうゆ)
原料 | 大豆にほぼ同量の小麦を使用したもの |
色の濃さ | やや濃い |
食塩分 | 約16% |
特徴、使い方 |
全国生産量の8割以上を占める、最も一般的な醤油。 塩味のほかに、深い旨味、まろやかな甘み、さわやかな酸味、味を引き締める苦みを合わせ持っています。 どんな料理にも使えるので、常備しておきたい定番の醤油です。 |
淡口醤油(うすくちしょうゆ)
原料 | 大豆にほぼ同量の小麦と、少量の米を使用したもの。 塩分を多くすることで発酵、熟成を抑え、醸造期間を短くしているため、淡い色に仕上がります。 |
色の濃さ | 薄い |
食塩分 | 約18~19% |
特徴、使い方 |
西日本を中心に使われる、色の薄い醤油です。 濃口醤油に次いで、全国生産量の1割以上を占めます。 塩分が濃口醤油より1割ほど高く、塩味を抑え、味をまろやかにするために米でつくった甘酒を加えています。 素材の色を活かしたいお吸い物や煮物などにおすすめです。 |
溜醤油(たまりしょうゆ)
原料 | 大豆のみを使用したもの(少量の小麦を加える場合もあり) |
色の濃さ | 濃い |
食塩分 | 約16% |
特徴、使い方 |
中部地方で人気のある醤油。 旨味の元となる大豆のみを使用しているため、旨味が強く、とろみと独特な香りが特徴の醤油です。 加熱したときにきれいな赤みを帯びるため、照り焼きや佃煮など色艶よく仕上げたい料理に使われます。 また刺身や寿司の醤油としても人気です。 |
再仕込醤油(さいしこみしょうゆ)
原料 | 大豆と小麦に麹を仕込むときに、食塩水の代わりに生揚げ醤油を使用したもの。 醤油を二度醸造するような製法なので、「再仕込」と呼ばれています。 |
色の濃さ | 非常に濃い |
食塩分 | 約16% |
特徴、使い方 |
中国、九州地方で好まれている醤油。 2度仕込んでいるため、色、味、香りともに濃厚で、とろみがあります。 卓上用として、刺身や冷奴などに多く使われます。 強い甘みがあるため、「甘露醤油」とも呼ばれています。 |
白醤油(しろしょうゆ)
原料 | 小麦とごく少量の大豆を使用したもの。 低温かつ短期間で発酵させているため、淡い色に仕上がります。 |
色の濃さ | 非常に薄い |
食塩分 | 約18% |
特徴、使い方 |
愛知発祥の、非常に生産量の少ない醤油。 色がとても淡く、琥珀色です。 旨味やコクは少なく味は淡白ながら、甘みが強く、独特の香りがあります。 色の薄さや香りを活かして、素材の色を活かしたいお吸い物や煮物などにおすすめです。 |
等級
JAS規格(日本農林規格)により、醤油には美味しさの目安になる等級が決められています。
これらの等級は、「窒素分」の含量や色の度合いなどを検査し、色、味、香りを総合的に判断して決めています。
醤油の旨味成分であるアミノ酸は窒素化合物なので、窒素分が多いほど、旨味が強いと言えます。
等級は、「標準」「上級」「特級」の3段階に区分され、特級のなかでも、特級の基準より窒素分が10%以上多い醤油などには「特選」、20%以上多い醤油などには「超特選」という表示が許可されています。
料理における主な効能
醤油は、その豊かな味わいを活かした調味のほかに、調理に欠かせない様々な効能があります。
最近では塩分を減らした醤油が販売されていますが、塩分が少ないと効果は低くなる可能性があります。
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味に深みを与える:
醤油は味覚の基本要素と呼ばれる旨味、塩味、甘味、酸味、苦味の5つの味が含まれている調味料です。醤油を加えるだけで、味に深みが生まれます。 -
塩味をやわらげる:
醤油に含まれる香味成分や乳酸などには塩味をやわらげる力があるため、漬物や塩鮭など塩辛いものに醤油を少し垂らすと、塩味がやわらぐことがあります。 -
臭みをとる:
醤油に含まれる香りや成分には、魚や肉の生臭さを消す作用があります。 刺身を醤油につけると、生臭さが和らぎ、より美味しくいただけます。 -
殺菌、防腐する:
醤油は含まれる塩分などの効果によって、殺菌力を発揮します。そのため刺身の漬け丼など、魚や肉を醤油に浸して保存する知恵が伝えられてきました。 -
照りを出す:
加熱すると、醤油の中のアミノ酸と糖分が反応を起こし、美しい照りが出ます。また、この反応は芳香物質を生むため、香ばしさも増します。そのため、照り焼きやせんべいには醤油が使われます。
豆知識
味付けの順番ですが、醤油は長時間加熱すると香りが飛んでしまいます。 「さしすせそ」の順番どおり、砂糖と塩の後、酢や味噌と同じタイミングで調理の仕上げに入れましょう。
醤油を健康的に活用するコツ
毎日の食事に欠かせない醤油ですが、塩分が多く含まれていることには注意が必要です。
一日あたりの塩分の摂取目安は、男性が8g、女性が7gとなっていますが、例えば濃口醤油の場合大さじ1杯で約2.6gの塩分が含まれます。
汁物や煮物の場合には出汁をきかせたり、香味野菜で味を補ったり、醤油を使いすぎない工夫が大切です。
また減塩醤油など、塩分を控えてある醤油を使うのも一つの手です。
保存方法
醤油は空気に触れることで酸化が進み、色が濃くなったり、香りや味が変化してしまいます。
開封後はしっかりと蓋をして冷暗所(できたら冷蔵庫)で保存しましょう。
最近では、鮮度を長持ちさせたり、量を調整しやすい工夫が施されたボトルの醤油も増えています。
卓上で使い切るぶんだけであれば、小さな容器に移し替えて使用しても。
ただし、酸化しやすいので、注ぎ足さずに水洗いして、必要な分量だけ入れてください。
賞味期限は長いもので2年、短いもので8ヶ月ほどですが、醤油の種類や容器によって異なります。
開封後はなるべく早く、1ヵ月程度で使い切ることが理想です。
おすすめの道具
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真っ白で清潔感のある上品な醤油差し。液だれしにくく、汚れにくい仕上げなので、いつでも気持ちよく使えます。
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グッドデザイン賞受賞の優れたデザイン。液だれしにくい注ぎ口に、量の調整がしやすい空気穴付き。6色展開で、食卓のアクセントに。
※参考文献:キッコーマン、農林水産省、しょうゆ情報センター、職人醤油