和食の調味料 みりん
料理に甘さを加える調味料、みりん。
一般的にみりんと言えば酒の一種ですが、実は種類によってはアルコールを含まないものもあります。
そのため、種類によって性質や料理における効能が大きく異なります。
それぞれにいいところがあるので、まずは違いを知って、ニーズ合わせて選んでみてください。
種類
みりんの種類は、「本みりん」「みりん風調味料」「発酵調味料(みりんタイプ)」の3つに分けられます。
種類は、商品のラベルに「品名(または名称)」として表示されているので、購入の際には確認しておきましょう。
本みりん
アルコール度数 | 12.5~14.5% |
糖分(エキス分※1) | 約45% |
特徴 |
アルコール度数が高く、昔は甘口の酒として愛飲されていました。 アルコール度数が高いため酒税(※2)がかかり、高価です。 まろやかで深い甘みと、種類豊富なアミノ酸が生み出す旨味が特徴。 |
みりん風調味料
アルコール度数 | 1%未満 |
糖分(エキス分※1) | 約65% |
特徴 |
みりんに似せてつくられた調味料。 アルコール分が非常に少なく、酒税(※2)がかかっておらず安価です。 本みりん以上に糖分が高く甘みが強いことが特徴。 |
発酵調味料(みりんタイプ)
アルコール度数 | 8~15% |
糖分(エキス分※1) | 約45% |
特徴 |
本みりんと同じようにアルコールが含まれていますが、塩を加えて飲用できないようにしているため、酒税(※2)がかかっておらず安価。 100mlあたり1.5g以上の塩分が含まれているので、塩味の調整が必要です。 |
※1 エキス分とは甘みの目安になるもので、一般にエキス分が高いほど甘みが強く濃厚になります。
※2 酒税は、アルコール度数1%以上の飲料にかかる税金です。
製法
本みりん
もち米と米麹を醸造アルコールや焼酎に仕込み、じっくり時間をかけてつくられます。
発酵過程がなく、麹のもつ酵素の力を利用して、糖化・熟成します。
米のでんぷんが分解されることで、甘みである糖類が生まれ(糖化)、熟成させることでまろやかな味わいになります。
みりん風調味料
水あめに調味料や酸味料などを混ぜ合わせてつくります。
発酵調味料(みりんタイプ)
雑穀を糖化し、一部アルコール発酵をさせたものに、醸造アルコールと塩を加えてつくります。
料理における主な効能
みりんの料理における効能は、そのアルコール度数によって大きく異なります。
アルコールを多く含む本みりん、発酵調味料(みりんタイプ)の場合、肉や魚の生臭さを消すなど、アルコールによる調理効果が期待できます。
また本みりん、発酵調味料(みりんタイプ)の場合は、加熱しない料理(白和えなど)の場合、予め煮切ってアルコールを飛ばす必要がありますが、アルコールをほとんど含まないみりん風調味料の場合は不要です。
すべてのみりん
-
上品な甘みをつける:
みりんと砂糖は甘さの質が違い、砂糖は直接的な甘さであるのに対して、みりんはふくよかで柔らかい甘みです。
特に長期熟成でつくられる本みりんは、砂糖では得られないまろやかで深い甘みがあります。
これは、砂糖に含まれる糖はショ糖の1種類のみですが、本みりんにはブドウ糖など9種類以上の様々な糖が含まれているから。
料理に奥行きのある甘みをつけることができます。
-
照りとツヤを出す:
みりんに含まれる糖が素材の表面に被膜をつくり、照りやツヤをつけることができます。
この照り・ツヤは砂糖だけでは出せず、みりんに含まれる様々な糖の働きによるものです。
砂糖の倍近い照りやツヤを出すとも言われ、照り焼きにはみりんが欠かせません。
特に糖度の高いみりん風調味料が、照り・ツヤを出しやすく、おすすめです。
照り・ツヤを出したいときには、調理の最後に入れると効果的です。
-
コクと旨味を出す:
みりんに含まれるアミノ酸には、旨味成分が含まれているため、料理に使うとコクや旨味が生まれます。
特に旨味の元となるアミノ酸をたくさん含んだ本みりんを使えば、こっくりとした美味しさに。
本みりん、発酵調味料(みりんタイプ)
-
味を染み込みやすくする:
アルコールがすばやく食材に染み込み、一緒に他の調味料も染み込みやすくします。
調理の最初に入れるとアルコールの働きが最大限に活かされます。
-
肉や魚の生臭さを消す:
アルコールが蒸発するときに、肉や魚の奥にある生臭さの成分を一緒に抱えて蒸発するため、臭いを消すことができます。
さらに加熱することでみりんの香りが高まり、臭いを隠す効果もあります。
調理の最初に入れるとアルコールの働きが最大限に活かされます。
-
煮崩れを防ぐ:
材料にアルコールが浸透することで、材料を引き締め、煮崩れを防ぎます。
調理の最初に入れるとアルコールの働きが最大限に活かされます。
豆知識
みりんは、砂糖と酒で代用できると思われがちですが、上記のようにみりんと砂糖の甘さには本質的な違いがあります。
砂糖はしっかりとした直接的な甘さ、みりんは柔らかい甘さです。
また、照りやツヤの出方も異なり、砂糖の場合だと十分な照りが出る前に焦げてしまう可能性も。
ただし、みりんに含まれるアルコールによる効果(味の浸透を高める、生臭さを消す、煮崩れを防ぐ)は、砂糖と酒の併用である程度代用することができます。
みりんを健康的に活用するコツ
砂糖に比べてみりんはカロリーがやや低め。
血糖値の上昇が緩やかなのもポイントです。
ただしみりんの甘さは砂糖より控えめで、砂糖の1/2~1/3程度の甘さのため、甘さを求めて入れすぎないよう注意しましょう。
また発酵調味料(みりんタイプ)の場合は塩分調整が必要です。
保存方法
温度変化の少ない冷暗所での保存がおすすめです。
アルコール分をほとんど含まないみりん風調味料は、開栓後は冷蔵庫で保存して早めに使い切りましょう。
※参考文献:宝酒造、オエノングループ、全国味淋協会、九重味醂、三州三河みりん、
日本名門酒会、ミツカン、NHKテキストビュー